BLUE軍団の脅威~東日本インカレ男子団体「青森大学」

東日本インカレ男子団体は、試技順1番が青森大学Aだった。

優勝候補の筆頭。絶対王者の青森大学は、ここで万全の演技を見せ、試合が始まったとたんに勝負はついた、かのような空気が会場を支配した。

昨年の全日本選手権での演技をさらに磨き上げ、精度を上げてきた印象の青森大学Aチームの演技にはつけいる隙がなかった。

中心選手だった原田幹啓が卒業し抜けた穴は小さくはなかったはずだ。それでもその穴をまったく感じさせない演技を、青森大学Aはやってのけた。

「こんな演技されたら、誰も勝てっこない・・・」

多くの人がそう思っただろう。

2017年も、青森大学が男子新体操団体の頂上に君臨し続けるに違いない。

そう思わせる演技だった。

しかし、その数分後。

フロアに登場した青森大学Bチームの演技は、「青大はAだけじゃない!」という存在感に満ちていた。

メンバーには、大岩達也、磯谷銀次郎の4年生コンビが入っていた。2人は青森山田高校からずっと一緒にやってきている。

いわば青森の根幹を支えるスピリッツを色濃く持ったチームだと言える。

そこに、鹿児島、静岡、宮崎、北海道などから「青大で新体操をやること」を夢見て集まってきた選手たちが加わり、おそらく彼らが高校生のころから(あるいはもっと幼いころから)目指していただろう「THE青大」といった落ち着きと風格のある演技を見せた。

ブランコなどの大技は、Aほどの派手さはないが、その分、しっかりと美しい徒手を見せ、胸に迫るもののある演技だった。

「Bでもこれって、凄まじい」

彼らは、自分達の演技をもって、今の青大の強さを証明してみせた。

ところがさらに。

試技順5番目に登場した青森大学Cチームが、これまた勢いのあるチームだった。

恵庭南高校出身のルーキー・五十嵐涼介、中村隆太の生きの良さはもちろんのこと、1年生の多いこのチームには、「これからの自分を見ていてくれ」というような気概があふれていた。今はまだ青大を背負っているわけではない。が、いすれは自分がそうなるのだ! という野心、覚悟。そんなものが伝わってきた。

若い、怖いもの知らずのチームらしく、ブランコにも挑戦し、組みでは驚くほど高い跳躍も見せた。

今年の青森大学Aチームには4年生が多いが、彼らが卒業した後も、青大が弱体化することは決してないだろうと、今回の3チームを見れば確信できる。

青森大学の全日本インカレでの連覇が始まったのは、2002年だった。

はじめは部員数も少なく、有力選手が集まってくるわけではなかった。

練習環境にも恵まれず、青森山田高校の体育館を間借りするような形で練習時間をねん出してきた。

体育館で練習できない時間は、硬い床のロビーでもなんでもお構いなしにできることをやってきた。

最初から「常勝軍団」だったわけではない。むしろ、中田監督は、「弱いやつが好きだ」と公言していた。

高校時代には勝てなかった、優勝なんて程遠かった。

そんな悔しさをいっぱい経験してきた「弱いやつ」を集めて、当時の強豪校・福岡大学や国士舘大学に勝つ!

それが中田監督のモチベーションになっていた。

2002年に全日本インカレ連覇が始まってから、青森大学はずっと強い。

強いが、環境には相変わらず恵まれず、体育館でフロアマットの上で練習できる時間は短いままだった。

だから、そのころの青森大学には、勝っても勝ってもハングリーさが感じられた。

「よそよりも恵まれない環境でも俺たちは負けない!」という気概があった。

 

しかし、今の大学生たちは、入学した当初から、専用の体育館のある青森大学しか知らない。

寮も、以前の古びた寮ではなく、体育館に隣接したこぎれいな寮になった。

かつては卓球センターだった建物が、男子新体操専用の体育館になり、寮も完備された。

それは、青森大学が長年にわたり、実績を上げつづけ、青森大学にとってなくてはならないものになってきたからこそ実現したことだろう。

3年前に現在の体制が整い、選手を預ける側の高校や保護者にはおおいに安心感が増したときく。

それが、現在の青森大学新体操部の人数の多さに現れている。今年は、新入部員が14人!

全国の、それも上位選手たちがこぞって青森大学に集まってきている。

環境の改善は、それまでの青森大学の先人たちや関係者の努力の賜物だ。よいことには違いない。

ただ、ひとつ案じられるとしたら、かつてのような「ハングリーさが失われないか」という点だった。

が、今回の東日本インカレでの3チームの凄まじいまでの演技を見て、それが杞憂に過ぎないことを思い知らされた。

 

「環境に恵まれない」というビハインドは解消されたかもしれないが、青森大学を選んで進学した選手には、今まで以上に厳しい競争が待っている。

「新体操日本一の大学」にいるんだという誇りを手に入れることは、そこでの厳しい競争にさらされることと同意だ。

それでも。

青森大学の一員として4年間を過ごすこと、を選ぶ覚悟のある選手が、集まってくる。それも、こんなに大勢だ。

その厳しい競争があるから、メンバーは入れ替わっても、青森大学の「強さ」だけは変わらない。

いつか効いた中田監督の言葉を思い出す。

「フロアに立っている6人以外の熱で負けたら、勝負には勝てない」

いつかは6人に入りたいと、必死に努力し、それが叶わなければ必死にサポートし、チームの勝利を祈り、勝てば選手以上に歓喜する。

そんな選手たちが全員で、青森大学の団体を支えている。

そして、彼らはこうやってひとたびフロアに立てば、たいていのチームには勝てそうなくらいの能力を持っているのだ。

それだけ、努力し続けているのだ。

「どうせレギュラーにはなれない」「どうせ出番はない」とくさっていたら、こうはなれない。

もしかしたら、4年間、願いは叶わずに終わるとしても、最後の瞬間まで望みは捨てず、努力し続ける。

それができる選手ならば、青森大学を選んでよかったと思える4年間にきっとなる。

つまり。

青森大学は今年も強い。

そう証明した東日本インカレだった。

 

練習環境が少々よくなったくらいで、寮が快適になったくらいで、失われることのないハングリー精神が彼らにはある。

それこそが、青森大学が勝ち続ける最大の理由なのだ。

 

PHOTO & REPORT:Ayako SHIMIZU        TEXT:Keiko SHIINA