2016高校総体に向けて⑧~香川県立坂出工業高校

7月31日、香川県の坂出工業高校で、坂出工業と井原の合同練習と演技披露があるという情報を得て、行ってきた。

 

正直言って、今年は「井原を見に行く」のが主目的だった。

ちょうど1年前も、この合同練習を見に行ったのだが、そのときは「今年の坂出はいいらしい」という前評判を聞いて見に行ったのだが、今年は、坂出に関してはとくに情報がなかった。

そして、昨年の中心選手だった川東をはじめ、3年生が3人抜けたことを考えると、「今年は昨年よりは落ちるだろう」という予測があっただけに、

大変失礼な話だが、「井原のついでに坂出も見られればラッキー」くらいの気持ちで出かけて行った。

ところが、である。

力のあった去年の3年生が3人抜けても、坂出のチーム力は決して落ちていなかった。

昨年に勝るとも劣らない、力強く、一体感のある演技を、今年もしっかり完成させてきていたのだ。

 

去年のチームは、林晋平監督自身が、「ここ数年では最強」と言っていた。

川東という力のある選手がいること、さらに、高校から新体操を始めた選手たちも、3年生まで頑張ってきただけの力がついてきていること

が林監督の自信の根拠だった。

 

それを思えば、今年の坂出も力のあるチームなのも道理だ。

昨年のこの時期、Bチームとして練習を重ねていた選手たちも、高校から始めたとは思えない演技をしていたじゃないか。

彼らに今年は出番が回ってきたのだ。

「去年よりは落ちるだろう」と勝手に思い込んでいた自分を恥じた。

高校総体4位という結果を残した去年もそうだったが、坂出工業の演技には、突出したものはない。

他のチームを圧倒するほどの美しさ、強さ、独創性のある技、表現力などがあるわけではない。

ただ、非常にベーシックな「男子新体操かくあるべし」といった動きを、忠実に精度よく、そして同調して行う力に長けているのだ。

 

ある意味、シンプル。

それだけに、素材の味わいがよくわかる。

坂出工業は、そんなチームだと改めて感じた。

昨年、人気を博したテレビドラマ「下町ロケット」をふと思い出した。

 

昔かたぎの職人たちのいる町工場で作った部品が、ロケットを飛ばし、最新医療を支える。

あのドラマだ。

 

選手がごっそり代わっても、同じように坂出テイストをもち、同じようなレベルまでもってこれる坂出の選手たちは、

言葉はよくないかもしれないが、「無骨だが性能のいい部品」のようだ。

派手さはないが、精密で誤差が少ない。

だから、部品を入れ替えても、作品の精度が落ちない。

今でも「高校から新体操を始めた子」が多いというこの部にとっては、このやり方が王道であり、近道なのだ。

かつて常勝軍団だった坂出工業の監督を若くして引き継ぎ、どん底に沈む経験もしながら、ここまできた。

そんな林監督は、いわば町工場の社長だ。

ブランド物ではない、派手さはない。

だけど、品質に間違いのない、信頼される選手たちを、毎年着実に育てているのだから。

 

「今年もいいじゃないですか」

林監督にそう言うと、彼はうれしそうににやっと笑った。

そして、「今年はダークホースを目指してます」と言った。

 

私同様、「今年の坂出は落ちるだろう」と予想している人も少なくない。

ぜひ、そういう人たちを驚かせる演技を、本番で見せてほしいと思う。

それだけの力を、彼らはもっているのだから。

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA