第67回全日本学生選手権 女子種目別決勝「角 果奈子(国士舘大学)」

「ラストステージ」

 

今大会の女子個人総合で16位だった角果奈子は、あと一歩のところで全日本選手権の出場権に届かなかった。

しかし、リボンだけは6位で種目別決勝に残り、おそらく「これが最後」という思いで彼女は決勝のフロアに上がった。

 

角がリボンの演技で着ていたレオタードは、一昨年の国士舘大学のリボン&ボール団体で着ていたものだ。

2013年の国士舘団体は、黒とゴールドを基調としたこのレオタードで、曲はボン・ジョヴィの「It"s my life」。

それはそれはかっこいい、見ていてわくわくするような作品だった。

高校時代は、名門・佐賀女子高校で団体、個人の選手を兼任していた角は、国士舘大学に進学し、1年生のときは個人選手としてインカレに出場していた。しかし、2年生になると団体メンバーに入っていた。団体のチーム事情もあったのかもしれないが、角自身がじつは「団体が大好き」な選手だったと聞いている。国士舘大学の団体は、角が1年生のときは全日本インカレで総合4位、全日本選手権でも総合4位と昇り調子だった。

おそらく角も、おおいなやりがいを感じて、この団体に取り組んでいたのではないかと思う。

しかも、曲がボン・ジョヴィだ。このシーズンから女子の使用曲はボーカルが解禁になり、国士舘にとっては初のボーカル曲での作品がこのリボン&ボールだった。高校時代は、技術こそは高いものの、やや表情には乏しい職人肌の選手だった角が、この作品の中では表情豊かに、躍動していた。もとより、リボンの操作には定評のあった角は、間違いなくチームの要であり、その役割を十分に果たしていた。この作品は、曲のノリの良さもあり、常に会場を沸かせ、ライブのような盛り上がりを見せた。

そして、この年、全日本インカレで国士舘は総合3位になった。ほんの数年前まで、遠い夢だと思っていたメダルをついに手にしたのだった。

2年、3年と団体メンバーを務めていた角だが、4年になった今年、個人選手となった。

そこにもチームの事情もあったのだろうが、「団体が大好き」な角は、もしかしたら少し残念な思いをしたのかもしれない。

それでも、おそらく彼女は、自分の置かれた場所で、悔いのない最後の年をまっとうしようとしたのだろう。

東日本インカレのときから、角は、身体も引き締まり、集中力のある演技をしていた。

そして、今大会もミスのあった種目もあり、場外もあったが、どの演技もエネルギーに満ちていた。

ミスもあったため、もしかしたら、「この大会が最後(全日本には進めない)」という覚悟があったのかもしれない。

少なくとも、彼女が「これで最後になっても悔いのない演技」をしようとしていることが伝わってきた。

3日目。種目別決勝の最終種目となったリボンの3番目が角の出番だった。

あのボン・ジョヴィ団体のときのレオタード。そして、曲もボン・ジョヴィの「Livin' On A Prayer」だ。

どんな演技をしていても、まったくからむような気がしない安定した、強いリボンの掻き。

小円も美しく同じ形、同じ大きさにくるくると描かれ、この選手の技術の確かさを感じさせる。

チャイルド時代には徒手でも、とても正確な演技を見せていた角果奈子は、ジュニア~高校生~そして大学生になっても、やはり「職人」だった。その職人技がもっとも際立つリボンは、彼女の最後の演技にふさわしい。

演技中盤からは、曲の盛り上がりそのままに、まるでステージの上でシャウトしているように角の演技は弾けた。

国士舘の応援団だけでなく、観客席全体から、手拍子が巻き起こり、その手拍子に押されるように角の演技はますます冴え、笑顔が輝いた。

いつまでもこうして踊っていたい。

彼女はそう思っていたのではないか。

いつまでも見ていたい。きっと観客もそう思っていた。

角が演技を終えたとき、今大会一番の大きな拍手が会場に響き渡り、そして、それはいつまでも鳴りやまなかった。

「職人・角果奈子」は、最後の最後、間違いなくスーパースターだった。

 

PHOTO:Ayako SHIMIZU        TEXT:Keiko SHIINA