「一心同体」~昭和学院高校(千葉県)

全国高校総体2日目、女子団体競技。

試技順14番で登場した昭和学院は、それまでのチームとは明らかに違う、と思わせる風格のある演技を見せた。

ここ数年、タンゴなど大人の女性らしさ、美しさがにおい立つような演技が持ち味となっていた昭和学院の今年の作品は「ロミオとジュリエット」。ソチ五輪で羽生結弦が金メダルを獲得したときのフリープログラムの曲だ。

今の昭和学院にはよく似合う、美しく、そしてドラマチックな曲だ。総体連覇を狙うに相応しい曲にも思えた。

昨年の優勝メンバーもほとんどが残っており、昭和学院が高校総体を連覇する可能性は十分にあると思われていた。

しかし。

昭和学院の連覇への道は想像以上に険しかった。

まず、3月に行われた高校選抜で、まさかの11位に沈む。

昨年の昭和学院にはあり得なかったミス多発の演技だった。

さらに、6月の関東ブロック大会でも、落下1回。かろうじて落下は免れたもののあわや場外という投げのミスなどが重なり、二階堂高校(東京都)、駒場学園(東京)に負けて3位。順位がどうこう以前に、今シーズンになってからの昭和学院の演技には、昨年のような落ち着きがない気がした。

交換や連係などは、昨年よりもリスキーなものに挑戦してきていて、見せ場は増えた。決まれば、昨年以上のインパクトはある演技になりそうだ。が、それゆえか、今までのような完成度になかなかたどりつけないでいる、6月の関東ブロック大会で見た昭和学院の演技はそんな風に見えた。

 

昨年見た昭和学院の練習風景を思い出す。

6月の時点で、練習でもほとんどミスはなく、同調性もすばらしかった。とにかくより「伝わる演技をしよう」ということに心を砕いた練習をしていたのだ。

おそらく、今年は、その段階に至るまでに時間がかかっているのだ。

作品もいいし、選手たちの能力も十分に高い。ただ、果たして総体本番に間に合うのか? 昭和学院に関しては、そこだけが不安だった。

結果、8月8日の高校総体当日。

彼女たちは、そんな不安を吹き飛ばす演技を見せてくれた。

「ロミオとジュリエット」の曲によく映える純白のレオタードが彼女たちの美しさをいっそう引き立てる。パンシェの美しさ、そして、フェッテもぞくっとするほど揃っていた。うまくいかなかった試合では、危なっかしく見えた交換や連係にも揺るぎなく、「前年女王」にふさわしい演技であり、昭和学院がいつも目指していた「伝わる演技」そのものだった。目につくようなミスはなかった。

見る者を「ロミオとジュリエット」の悲恋の世界に引き込む演技、だった。

しかし、その演技以上に、印象的だったのは演技終了後の選手たちの表情だった。

チームの中心だった3年生の久保美咲、土井彩花は、泣き顔になっていた。極度の緊張から解き放たれ、心の底からほっとした、という表情だった。

連覇のかかった年、最上級生として彼女たちがどれほどのプレッシャーを抱えて戦ってきたのかが、その表情から伝わってきた。そして、この時点では得点も順位もわかっていなかったが、この局面でこの演技ができたことで、彼女たちはこのうえない達成感を得ているだろう、ということもわかった。

 

さらに。

泣きそうな顔で、声援に応えている選手たちの後ろには、こちらも泣きそうな顔で、とびあがるようにしながらガッツポーズをしている塩屋恵美子監督の姿があった。

ああ、そうだ。

この監督はいつもこうなんだ。

選手たちがよい演技をすると、誰よりも嬉しそうに、跳び上がって喜ぶんだ。

だから、監督のこの笑顔を見たくて、選手たちは頑張るんだ。

なかなか監督の笑顔を見ることができなかった今シーズンだったろうが、この一番大事な試合で、監督のこの顔を見られたんだから、最高の演技だったことは間違いない。

得点15,266は、この時点で1位だったが、直後に登場した伊那西高校(長野県)がそれを上回る得点15.416をたたきだし、昭和学院の連覇は消えた。

もちろん、勝ちたかったという気持ちはあるとは思う。

しかし、あの演技後の泣き顔と、塩屋監督のガッツポーズを見たら、順位はもはやどうでもいい、のではないかな、と思った。

苦しんできた今シーズン、高校総体で最高の演技をして準優勝。

すばらしい結果であり、苦しいなかでもあきらめずここまで上げてきたという過程には、もしかしたら優勝した昨年以上の満足感があるのではないか。

近年は、「美しい昭和学院」という印象だったが、今年は、それに加え、「しぶとい昭和学院」という側面が加わった。

今の3年生が主要メンバーだった昭和学院にとっては、彼女たちが卒業する来年は、勝負の年となる。が、少々メンバーが替わったところで、そうやすやすと落ちるチームではない、と今年の「しぶとさ」が教えてくれた。

来年もまた、塩屋監督のガッツポーズが飛び出すような演技を、彼女たちはきっと見せてくれる。フロアに上がっている5人だけでなく、サポートに回った選手たちもみんながそれを目指しているチームだから、きっとそれができる。

 

PHOTO:Yuu MATSUDA/Ayako SHIMIZU     TEXT:Keiko SHIINA