大阪でも爆笑の渦!~鹿児島実業高校(鹿児島県)

さっそく今朝(8月10日)の「めざましテレビ」(フジ)で、今年度高校総体での鹿児島実業高校の演技がとり上げられていた。

例年、話題性抜群の鹿児島実業の演技だが、今年のメインテーマは、「妖怪ウォッチ」。子ども達に大人気の「妖怪ウォッチ」の曲で、いつものとおりコミカルな演技が展開された。

今大会の鹿児島実業の試技順は、強豪・青森山田高校の直後。(なぜか青森山田の後になることが多い)今年の青森山田の演技は、すばらしく、会場が飲み込まれたような空気になっていた中での登場で、果たしてどうなることか? と案じられたが、おなじみの妖怪ウィッチの曲が流れ、2人×3組の選手たちが曲に合わせて順番に倒れると、最初の爆笑が起きた。よおし、つかみはOK! だ。

続けて、6人そろってのバランスに入るが、なんと、これが、上位校にも負けないほどのクオリティなのだ。線も美しく、上げた脚の角度も高い。

それがぴたっと決まる。いや、それだけでなく、その後、真ん中の選手が、女子ではよく見る「後ろもちバランス」を披露。それも後ろ脚に頭がくっくくほどの柔軟性を見せて、会場の半分を占める女子選手、女子関係者から喝さいが起きた。

 

「ええ、鹿児島実業、今年は強いんじゃない? うまいし。」

と思わせた直後、3人の選手が合わせた両腕の中に、片足を通す、つづいて次の2人が同様に通し、最後の一人が通そうとすると・・・うわっ、通らない! とじたばたしてみせ、それを他の選手が手伝って通し、ポーズ! という小ネタをはさみ、「いーや、今年もカジツは笑わせますよっ」と意思表示を見せつける。

 

しかし、その後の第一タンブリングでも、1人目の選手のタンブリングの線の美しさ、高さに、それまでの笑いとは質の違うさわめきが起こる。

「やっぱり、強いんじゃない?」 続く5人も、高難度とは言えないかもしれないが、それぞれのタンブリングをきれいに決める。

今年のカジツは(いや、正確には去年も一昨年もだったが)おもしろいだけではない!

その後も、お家芸のガニ股ポーズやぴょこぴょこ走り、などでしっかりと笑いはとりつつも、合間に入れ込んでくる斜前屈や上挙の美しさではハッとさせる。倒立では1人倒れかけてあやうかったが、これもオーソドックスな鹿倒立ではなく、脚をひし形にしての倒立という新しい試みゆえ。それでも、完全につぶれることもなく倒立もやりすごした。

 

中盤の見せ場は、なんといってもお笑い芸人バンビーノのネタ「ダンソン!」だ。あの「ダンソン!」のフレーズと振りで、6人がフロアを縦横無尽に動き回る。そして、次々に隊形を変えて見せるのだ。大会前の取材で、樋口監督は自信たっぷりに言っていた。

「これだけの短い時間で、これだけ隊形変えるのはなかなかできないはず」

たしかに。このネタだからできた斬新な構成。さらに、それを精度高くやりきるだけの練習を彼らが積んできた、ということだろう。

お笑いの聖地・大阪の一般観客も数多くつめかけていたと思われるこの日の観客席は、よく笑った。ダンソン!では爆笑が起きた。

その爆笑のさなかに彼らが見せた胸後反の美しかったこと。

鹿児島実業の演技を「ふざけすぎ」「これが男子新体操だと思われるのは心外」などと言う人には、鹿児島実業の体操をちゃんと見てほしいと思う。

彼らの演技は、「ふざけているだけ」ではないのだ、断じて。

 

そう感動させておきながら、またしてもカジツはやってしまった。

昨年の「伊勢佐木町ブルース」に続くセクシー路線。突然の「タブー」で身をくねらせ、1人の選手が挑発的な艶技を見せる。

しかし、その中にも美しい体回旋が入っており、もう、笑っていいのか感心していいのかわからない。もちろん、生真面目な審判はここでは怒っているに違いないのだが。

今年、久しぶりに見た鹿児島実業の練習で、以前はやっていなかったアイソレーションを取り入れていたことに驚いたが、そのトレーニングが見事に生かされたこのセクシーパートは、審判の受けは間違いなく悪いだろうが、彼らの練習の成果がよく表れていた部分でもあった。

最終タンブリングのあと、今回は大阪開催を意識したのか、カジツ史上もっとも長い(おそらく)コントが組み込まれていた。

さすがにちょっと長すぎるのでは? と案じていた部分だが、観客にはウケた。爆笑がまきおこり、演技後の拍手は、優勝校となった青森山田にも負けていなかった。

 

2011年の青森総体に、鹿児島実業は4年ぶりに戻ってきた。部員が減ってチームが組めなかったり、組んでも九州を勝ち抜けず、インターハイに出場できないという時期が鹿児島実業にもあったのだ。

2011年、久々の鹿児島実業の演技は、会場でも爆笑を誘い、動画も多く再生され話題になった。しかし、この年は、やっとチームが組めたという状況で、高校総体に出たチームにも3人の1年生(いずれも初心者)が入っていて、タンブリングは前宙のみ、なんて選手も混じっていたし、体操はお世辞にも褒められたものではなかった。

それでも、ウケたし、人気が出た。入部希望者も増えた。

それであまんじていたならば、鹿児島実業はいつまでも色モノのチームだったろう。

ユニークな演技が話題になればなるほど、「面白いだけのカジツでは終わりたくない」選手たちはずっとそう言っていた。

そして、その言葉とおりに、見るたびにうまくなっていった。

能力的には、ジュニアから実績のあった選手2名(現在、国士舘大学の福永、青森大学の内村)を擁した昨年がもっとも高かったと言えるだろうが、その2人が抜けた今年も、決してチームとしてはがた落ちはしなかった。それがすごい。

さらに言えば、九州国体で見たBチームも、まだ難しいことはできないが、じつに線のきれいな選手たちで、同調性は見事だった。

 

「楽しませる、笑わせる」のは簡単なことではない。

面白い振付、ユニークな選曲であれば、笑えるというものではない。

もはや、鹿児島実業の男子新体操は、ひとつのブランドであり、彼らはこのクオリティーを維持するために、あの演技からは想像つかないほどの真摯な練習を積み重ねているのだ。

少しベクトルを変えれば、本気で上位を狙うこともできるんじゃないか。

今だに、高校から新体操を始める選手が多い中で、ここまでの演技を毎年作り上げる樋口監督の手腕を考えると、そう思う。

でも。

やはり、カジツは変わらないだろうな。

毎年、「怒られないかなあ」と心配しながら、みんなを喜ばせる演技をやっていくんだろう。

そして、怒られても怒られても、メディアには取り上げられ、男子新体操の普及には最高の貢献をしていくのだ。

鹿児島実業がテレビで取り上げられるたびに、「男子新体操の強豪校」として青森山田や神埼清明、井原などもしっかりテレビで

紹介されてきた。その効果たるや、なにものにも替えがたい。

 

得点16.200で19位。数字だけ見れば、決して好成績とは言えない。

でも、きっと監督も選手も「やりきった」と思っているに違いない。

成績が振るわなかったのは、多分・・・「みんな妖怪のせい」だ。

 

PHOTO:Ayako SHIMIZU/Keiko SHIINA(練習風景)      TEXT:Keiko SHIINA