新体操 第66回全日本インカレ女子団体優勝「東京女子体育大学」
第66回全日本インカレの女子団体総合では、東京女子体育大学が優勝した。
なんと65連覇である。
65! この気の遠くなるような年数、東京女子体育大学は、全日本インカレの団体では負けていない。
近年は、他の大学も力をつけてきており、楽勝ではない年も増えてきた。
ジャパンや東日本インカレでは、土がついたこともあるし、2種目で行われる団体総合の片方の種目では1位ではないこともあった。
しかし。
全日本インカレの団体総合では負けない。
それが、東京女子体育大学だ。
じつのところ、今年の東日本インカレで、東女は、日本女子体育大学、国士舘大学の後塵を拝し、団体総合3位に沈んでいる。
「優勝」が宿命づけられている東女にとって、この3位は、どれほど屈辱的なものだったか、想像に難くない。
そして、それからの3か月間が、どれだけ厳しく、苦しいものだったかは想像に余りある。
しかし、大会1日目の個人前半競技終了後の公式練習での東女は、決してよい状態ではないように見えた。ミスも出ていたし、選手たちもどことなく不安げだ。
65連覇に黄信号? そんな風にも見えた。
ところが。
大会2日目、団体競技1種目目・クラブ10の5番目に登場した東京女子体育大学は、目の覚めるような堂々たるノーミス演技を見せた。
激しく、強く。
「これぞ東女!」と見せつけるような演技に、16.550という高得点が出た。
試技順9番の日本女子体育大学も、持ち味である同調性とスピードに長けた素晴らしい演技で応酬するが、最後の最後に落下があり、15.550にとどまる。
そして、最終演技者となった11番の国士舘大学は、演じている選手だけでなく、会場まで一体となるような素晴らしいパフォーマンスを見せるが、15.850と得点は、東女には及ばず。
1日目終了時点で、東京女子体育大学が、2位の国士舘大学に0.700差をつけて首位に立った。
2014年8月29日。
大会3日目、「ボール&リボン」団体での東女の試技順は、11番目。
ライバルとなる日女、国士舘の演技が先に行われた。
4番で登場した日本女子体育大学は、わずかに操作のもたつきや移動があったようにも見えたが、大きな破たんはなく、前日のミスを取り返そうとする気迫の演技で、15.850。
7番目の国士舘大学は、前日のクラブに比べると小さなミスが散見する演技になってしまう。作品そのもの良さは存分に見せることはできていたが、採点には響いたようで、15.400。日女が国士舘を逆転し、この時点で首位となった。
この結果、東女は、この日の演技で14.850点以上を出さなければ、日女に逆転優勝を許すことになるという緊迫した展開となった。
東女のボール&リボンは、昨シーズンに引き続き、「シェヘラザード」。ドラマチックでストーリー性のある作品で、昨シーズンは、敵なしだった鉄壁の作品だ。
これまでに積み上げてきた実績が、選手たちの自信にもなっているのだろう。
演技冒頭から、選手たちはじつに堂々と、この「アラビアの姫の物語」の語り部として華麗に、そして力強く舞った。
これは、東女の勝ちかな・・・。
多くの人がそう思い始めていただろう演技終盤、フロア前方、審判席の目の前で、リボンが落下した。交換の際に、空中でボールとリボンがぶつかってしまい、ボールにはねかえされるような形で、予定外のところにリボンが落ちてきてしまったのだ。
すぐに反応して、なにごともなかったかのように演技は続き、フィナーレを迎え、フロアから戻った選手たちは、サポートメンバーや指導者と、「終わった!」とばかりに抱き合ったり、感動を分かち合っていたが、内心、ひやひやしていたかもしれない。
演技終了直後は、大拍手、大喝采で選手たちを称えた観客席の東女の大応援団も、得点表示を待つうちに徐々に神妙な空気になってきていた。
そして、表示された得点は、15.500。
2種目総合では、見事優勝を勝ち取ったが、やはりこの種目では日女の得点が上回っていた。前日の貯金がものを言っての優勝だった。
かつてのような、ぶっちぎりの優勝ではないかもしれない。
苦しんだ末に、やっとつかみ獲った勝利かもしれない。
でも、だからこそ、価値があると思う。
65連覇を成し遂げた東女といえど、1つ大きなミスがあれば負ける。
それほど、女子の上位校間の差は縮まっている。
そんな苛酷な競争の中で、頑張っているからこそ、彼女たちは高みに登っていけるのだ。
優勝した東京女子体育大学の執念とも言えるねばりは素晴らしかった。
そして、あわや! と東女を脅かした日本女子体育大学、国士舘大学の勢いにも驚いた。
昨シーズンから試合ではミスで自滅することの多かった武庫川女子大学も、今大会ではやっと本来の力を発揮できていたように思う。
そんな中で、東女は、65連覇を成し遂げた。
これは、まさに「偉業」だ。
「東日本インカレのあとは、ほんとに苦しかったです。
東までは、個々の能力で戦っていたようなところがありましたが、あのあとは、とにかくチーム力を上げるということを目指してやってきました。
クラブは、東のときとは作品を変えて、今のチームにより合うものを、と曲も振付も考えてました。リボン&ボールは、昨シーズンと同じ作品ですが、どちらも東女らしい動きを意識して練習してきました。
音楽に合った動き、ストーリー性、高いリフトなどの見せ場もあり、どちらも見ている人が楽しめる作品になっていると思います。
65連覇を達成できて、本当に嬉しいし、ホッとしています。
プレッシャーもありましたが、それ以上に、部員のみんなの応援が力になりました。フロアで踊るのは5人だけど、部員79人全員で戦っているのが東女なのだと、感じることができました。(団体リーダー:佐藤彩乃)」
PHOTO:Norikazu OKAMOTO / Ayako SHIMIZU / Keiko SHIINA
TEXT:Keiko SHIINA