2014南関東総体に向けて~埼玉栄高校(埼玉県) 

いくつかの強豪校を欠いていたとはいえ、団体でのユース2連覇は、彼らの実力を語るうえでは大きな説得力を持つ。

 

結局のところ突き詰めると、勝負は「いかに完璧な演技をするか」ということに帰着する。埼玉栄のユース2連覇は、そのことを改めて知らしめた結果だった。石田監督はよく「うちはまだ、純粋な全国大会で優勝をしたことのないチームなので」と話す。確かに、ユースは団体の強豪校の多くが日程の関係で出場を見合わせており、純粋に全国での能力を競った大会とは言えない。しかしながら、「いかに完璧な演技をしたか」ということは、どの大会でも問われるものだ。本番で常に高いパフォーマンスを発揮し続けてきたという事実は、インハイでも多くの高校にとって脅威となるはずだ。

そしてインハイ直前の7月末、国士舘大学で練習していた埼玉栄の演技からは、もはや「例年通り」といっていいほどの安定感が漂っていた。周囲に威圧感を与えるような同調性を、射抜くような視線の強さを、爽快な体操のキレを、メンバーが等しく持っていた。堂々とした雰囲気は、自信がある、というのとは少し違う。恐らく優勝経験チームなら、ここで自信が垣間見えるはずだ。どんな演技で、どんな雰囲気のときにチームが勝ってきたかを知っているから、それに現状が近づくほどに自信は深まる。

 

一方で、彼らはまだそれを知らない。だからどちらかというと「挑む」ニュアンスが強い印象だ。だが代わりに、挑むことへの不安は限りなくゼロに近いように感じられた。ここまで不安の種をひとつひとつ、確実に潰してきたという自負。一人一人からそんなものが感じられた。

この自負を支える要因のひとつは、あまりに地道なトレーニングにあるかもしれない。埼玉栄は練習時間の多くを筋力トレーニングに充てる。それは4時間の練習なら、うち半分を筋トレに充てるほど徹底している。それは身体能力に恵まれた林雅己(3年)が「かなりキツイです」と苦笑するほどのメニューで、重りを背負ってのロープ上りや、スタンド宙返り20回など、全身を徹底していじめ抜く。だが、地道なトレーニングの効果は確かに結実しており、埼玉栄の選手は軒並み見映えする体格で、下肢にも安定感がある。3年の斎藤祐磨が「昔よりケガをしづらくなった」と話すように、選手たちは体の変化を実感している。

加えて言うなら、タンブリングに抜群の安定感のあるように思える埼玉栄だが、実は体育館にスプリングのフロアを持っていない。それでも大会会場で調整して、確実に技を決めることができるのは、このトレーニングが無関係ではないだろう。

 

また今年のチームは去年から3名、メンバーが変わっている。うち新井智貴(3年)と吉田直央(2年)のふたりは高校から新体操を始めた選手だが、そうとは思えぬほど、チームと一体感がある。彼らがここまで仕上がっているのもまた、基礎の徹底の賜物と言えるかもしれない。

 

しかし実を言うと、石田監督曰く今年のチームは、「タンブリングが強くないチーム」。タンブリングの難易度やパワーで圧倒することはできないが、代わりに演技終盤にはちょっとした見せ場を設けてある。他の高校とはまた違ったアプローチのそれは、また埼玉栄らしいと言えるかもしれない。

 

地道にトレーニングを重ね、実績を残し、あとは挑むのみ。表彰状の高みは、そう遠くはない。

 

 

 

●埼玉県代表選手(個人):林雅己

インハイの目標は、という質問に対する「表彰台です」という林の返答には、少し謙虚な印象を抱いた。しかし振り返ってみると、彼の選抜での順位は5位。表彰台を逃していた。

 

選抜5位という順位は、彼からすると不本意な結果だったに違いない。彼自身が「最後にポロッとやってしまうことが多い」と振り返るように、ミスがあったためにこの順位だったのだが、逆に言えばミスをしてもこの位置につける実力があるということ。本来の力を発揮していればあるいは、という選手なのだ。

 

改めてその演技を見ると、選手としての完成度は高い。体操は正確で力強く、手具操作も多彩、タンブリングも安定している。動きのハリ、スピード感、緩急も演じ分けることができる。

今回、優勝候補の筆頭とされる済美高校の安藤梨友は、タンブリング、手具操作、体操の全てで高いパフォーマンスを発揮することに定評がある。雰囲気や演技の方向性こそ違うが、林も同様に、それら全てで高い能力に恵まれた稀有な選手。それゆえに、期待を寄せずにはいられない。

 

個人と団体を兼任していること、さらにはチームを率いる立場にあることなど、負担も多きいが、その中でも高いパフォーマンスを披露すれば、おのずとその期待に伴った結果がついてくるはずだ。

TEXT by  横田泉  Photo by 清水綾子