ユースチャンピオンシップ事前企画① 恵庭南高校

東京はすっかり葉桜となった4月中旬、北海道はまだ残雪があり、ようやくふきのとうが顔を覗かせたくらいのまだまだ肌寒い日に、恵庭南高校の練習を見学させてもらった。

スポーツの盛んな学校らしく、廊下ですれ違う生徒は思いっきり元気よく挨拶を投げかけてくる。活気ある放課後の光景に期待しながら新体操部の練習している体育館へと足を踏み入れた。

昨年一度訪れているので驚きはなかったが、印象はともかく天井が低く、全体に薄暗い。

ボクシング部と半々に使っている体育館には常設でマットがあり、はるか昔体操部があった名残でトランポリンやスポンジプールがあって思い思いに遊びながら練習する姿も見られ、天井の低さのほかは充実した練習環境ではないかと思う。

なにしろ、この体育館から巣立ったOBの中からは日本を代表するトップ選手も生まれているのだ。

個人選手では、青森大卒の春日克之、花園大卒の鈴木一世などだが、よくぞこの天井の低さで個人の基礎を築いたと感心するほかない。

また、団体選手になると、大学で活躍した卒業生も少なくない。

この日は数年前から行っている、月に一度バレエの先生に来てもらって基礎を習うという日に当たっていた。新一年生にとってはおそらくはじめての体験だったのではないかと思うが柔軟を中心に小一時間ほどのレッスン。その後レギュラーが団体 、個人の練習、ほかの生徒は基礎トレーニングへと入っていった。

顧問の工藤直人先生によると、今年の新一年生はなんと12人。2、3年生合わせても9人とのことなのでこの春一気に活気づいたのだろう。そのうち、まったくの初心者が7人、経験者は5人。この5人が、昨年の全日本ジュニアで団体2連覇を成し遂げた恵庭RGクラブのメンバーがそっくり上がってきていると聞けばそれは周囲からの注目度も違うだろう。

工藤先生に話を伺うと、『そうなんですよ、そういわれます。』と言いつつも、『でも、実はまだまだ線の細さや、意外にできないことも多く、結構苦戦しています。上位校と互角に戦うには苦しい戦力です。』『今年は、夏に向けていつもなら基礎重視の時期なのですが、構成だけが先に出来て いて、まだ大事な基礎が足りないです。ジュニア上がりの選手も含めてこれから夏に向けて基礎をみっちり取り組んでいく予定です。』

その構成についても、『今年のメンバーは、キャプテンはじめこだわりが強くて、こういうふうにしたい、これがやりたいという意見がどんどんでてくる。指導も結構大変ですよ。』と言いつつも笑顔だった。

そして上級生にも、昨年度佐賀高校総体で団体3位に輝いた実力メンバーが残っていて、その後全日本と高校選抜を経て大きく成長した選手もいるので、そちらの活躍もぜひ見てほしい、とのこと。

  <石垣>

実際、マット(タンブリング練習)でも、3年生の中西将斗、石垣光汰朗は、安定した実力を見せていた。そして抜群の跳躍力と高難度の技を見せて仲間の拍手と歓声を受けていたのが 2年生の三好静槻(全日本選手権、高校選抜団体出場)である。この三好はバレエレッスンでも光るセンスを見せていたのだが、なんと中学まではサッカー部に所属、2年生ということはちょうど1年間の練習でこれほどに成長することができるということを目の当たりに見て驚きつつも新鮮な感動を感じることができた。

  <三好>

実は、恵庭南高校は、3月に行われた岐阜高校選抜では直前にキャプテンの高橋祐大が怪我による戦線離脱を余儀なくされた。高橋は、練習見学に行ったこの日、ようやく許可が出て動くことができるようになった、とのこと。

レギュラーメンバーの一年生たちは高校へ上がる前から一緒の場所で練習していることや、その高橋の明るく人懐っこい人柄もあるのか練習自体がとても明るく笑い声も聞こえるほどだった。先輩後輩の区別がつかないくらい仲がいい空気があり、キャプテンの復帰で一気に練習自体に活気が出てきたのではないかと感じた。

 

5月30日~6月1日に行われるユースチャンピオンシップでの抱負を選手に尋ねてみた。

高橋『昨年のユースでは決勝に進むことができたのに怪我で棄権し悔しい思いをしました。なので今年はまた決勝へ進んできちんと結果を残したい。』

  <高橋>

森多『ジャパン進出(個人総合9位以内)が目標です』

  <森多>

中村大雅『自分で納得のいく演技がしたい。今できる最大限のことがきちんと本番で出来るようにがんばりたい』

  <中村>

五十嵐『自分では団体のほうが好きなんですが、個人ででるからには決勝進出を目標にしたい。メンタルの弱さを克服したいです。』

  <五十嵐>

キャプテンの高橋に今年度の目標を尋ねると、

『やはり、去年の団体3位(高校総体)、それ以上を目指したい。出来れば、優勝を。』という力強い答えが返ってきた。

最後に、目標にしいてる選手や憧れの選手は? と彼らに問いかけると、一斉に

『春日さんと鈴木さんです、もう絶対はずせません、神です、神!!!!』

と開口一番に卒業生の名前が挙がった。

ほかには? と促すと、驚くほどたくさんの名前が次々飛び出してきて、その選手のどこがいいのか訊こうものなら明日の朝までかかっても語りつくせませんよ!という。

誰かが選手の名を上げるとほかの子たちがため息まじりに、『あ~、いいよね~、めっちゃかっこいい!! やばい、憧れだ~!!』と本当にうれしそうに言い合っている。その姿を見ていて、ああこの子たちは心の底から新体操が好きなんだな、と思うと同時にきっとこの体育館からは春日、鈴木に続く選手が今後も生まれるだろうという確信のような予感が沸き起こった。

三好のような高校スタートでも高い成長率を見せる選手もいれば、ジュニアから着実に育つ選手もいる。

お互いに刺激を与え合っての相乗効果もあるのだろうと思う。

まだ入部間もない一年生の初心者の子達にもつま先の綺麗な子がいたので高橋に尋ねると『そうなんです、自分より柔らかいです』と、目を細めた。

未知数ながら、彼らもまた未来のチャンピオンかもしれない。大勢同級生がいて競えるのはいいね、とレギュラーの一年生に問いかけると『はい、負けてられません。』と、引き締まった表情で答えた。

まずはユースチャンピオンシップ。

きっと彼らは1ヵ月半後の舞台でも着実な成長を見せてくれると、大きな期待を抱いて体育館を後にした。

 

PHOTO & TEXT  by Ayako SHIMIZU