2013全日本新体操選手権大会/木村 功(清風RG)

 
私は、木村功という人物を知らない。
ただ、プレスエリアという狭い場所から垣間見たその選手の、とてつもなく美しい姿を知っているだけだ。

木村功はバランスのいい選手だと思う。
例えば、表現力に特化するわけではなく、かといって柔軟性やタンブリングの強さや高さ、手具操作の巧みさで群をぬくという印象もない。はたまたその選曲に頼ることもなければ振り付けの妙に寄りかかる選手とは一線を画す。
そして、練習会場や試合会場で見かける彼は常に穏やかな笑みを絶やさず、物腰柔らかで礼儀正しく好青年である。

しかし、である。
ただバランスのよい、平均値の高い優等生ではけしてない。


4種目それぞれに描かれる4つのショートストーリーのような演技のなかで、恋い焦がれる切なさや人生の絶望と希望、激しい怒り、思慕といった様々な人間の感情を、その体躯のすべてを駆使して「何か」を、伝えようとするその姿は崇高とさえ思えるほど美しいと感じる。

何より、上腕から胸筋、腹筋にかけての均整のとれた美しい上半身の、常に軸のぶれない安定感は素晴らしいと思う。倒立や組技でパワーの必要な団体選手には多いが個人選手ではこのようなタイプは少ないのではないだろうか。
木村が意識してこの体躯を創りあげたのかどうかはわからない。が、おそらく彼の目指す新体操の世界観には必要不可欠なもの、なのではないか。
そして上体だけでなく、トップクラスのバレエダンサーに匹敵するような下肢の強靭さ、中でも足の甲のしなやかさと、そのゆるみない爪先の美しさにおいては木村以上に美しい男子新体操選手は皆無であり、すなわち日本一と称しても過言ではないと確信している。
このバランスのよい木村の美しさは、けして持って生まれた天性のものではなく、木村自身の日々の鍛錬と、積み重ねた数々の経験から産み出されたものであり、おそらく「努力の人」なのではないかと推測する。
 

社会人選手である彼が日々どのような練習をしているのか私は知らない。
が、演技前のほんの一瞬、祈るように目を閉じその美しい爪先がフロアにかかった瞬間から、演技後、余韻を名残惜しむかのようにゆっくりとフロアを降りるその時まで、一挙手一投足のすべてに全身全霊をかたむけているかのような、そんな気概を感じる選手である。
その練習方法もおそらく短い時間であったにしても集中を欠かさぬ濃い内容であるに違いないと思っている。

 

特筆しておきたいことがある。
そんな木村が、サブフロアでの自身の公式割当練習中、フロアに背を向け別の方向をじっと佇んで見つめる場面があった。


その視線の先にいたのは、清風高校である。
その時同時に行われていた隣のメインフロアでの公式練習は、現在木村が指導している清風高校の、団体練習の最中であった。
自身は選手として日本トップの大会に挑みながら、指導者として名門清風高校新体操部団体を同じ舞台へ連れてきたのである。


しかし、屈指の進学校でもある同校は、その練習環境も時間もごく限られたものであると聞いている。そのためなのか過去、ややもすると繊細さには欠け荒削りともとれる印象のあった同校が、木村の就任以降、目に見えて大きく変化をみせている。
彼らこそが木村イズムとでもいうべき美学の継承者たちであるというには、まだ早すぎるとはわかっている。心身ともに伸びゆく10代の高校生たちに一朝一夕にそのすべてを受け継いでくれることを望むのは酷というものだ。
が、今大会、随所に片鱗が見えてきたこのチームをみて、少し先ではあるが2年後、地元・大阪で開催予定のインターハイでの活躍を期待せずにはいられない。
今大会、指導者木村のその真摯な姿を目の当たりにした高校生たち彼らが、もしくはその後輩たちが、今後どのような成長を、そして戦い方を見せてくれるのか。


彼なら、木村功という人物ならきっと、もうすでにその先を見ているに違いない、と私は思っている。

 

PHOTO & TEXT  by Ayako SHIMIZU