「FLYING BODIES」完成披露試写会

2013年11月14日、中野裕之監督作品「FLYING BODIES」の完成披露試写会が行われた。

 
この作品は本年7月に国立代々木競技場第二体育館にて行われた「青森大学男子新体操部」公演の本番までの3ヶ月を追ったドキュメンタリー映画である。この公演は三宅一生が企画・コスチュームデザインを行い、世界的な振付家Daniel Ezralowが演出を行った。それだけでなく、モーショングラフィックスは中村勇吾、照明デザインは海藤春樹、そして音楽はOpen Reel Ensemble、編曲は畑中正人と、そうそうたるメンバーが関わる公演となった。
 
映画の前半部分は公演に向けての練習風景や、選手、監督などのインタビュー映像、後半は公演の映像といった構成になっている。
こうして言葉にしてしまうと、一見ありふれた構成のような気もするが、展開の仕方がとてもスムーズで、なおかつ練習風景で見ていた映像や音楽、言葉が後半の公演を見ているときにリンクする。見終えた後はやはり公演のインパクトが大きく、とても感動するのだが、じっくり噛みしめていると実は映画としての「作品」の素晴らしさがもたらしている感動でもあるということに気づく。
 
青森大学新体操部に突然、東京公演の話が持ちかけられる。そしてDanielと中田部長とともに公演に向けての練習が始まる。
選手同士だけでなく監督やコーチ、もちろんDanielも一緒になって試行錯誤する。選手に対するインタビューでも「ここでは先生と生徒の距離が近くていい。」という発言があり、中田先生も「結果が出なかったとしても、過程を大切にしたい。」と青森大学新体操部の軸であるものが、彼らの練習風景からも見えてくる。そしてチームの軸が、いつの間にか個人の軸にもなっているような気がした。
おそらく三宅一生もそういったところに惹かれたのではないかと思う。あの世界的なデザイナーに「この企画のために他の仕事は断った」とまで言わせてしまう魅力が、彼らにはある。
そんな練習風景はDanielの考えもあり、かなり明るい雰囲気だ。半分遊びながらやっているようにさえ見えた。たまにふざけているような姿も見られたが、「一度ストッパーを外してふざけてみることで、違うものが現れてくるんだ」とDanielが指示してやっているものだった。その言葉通り、彼らはどんどん進化していっているように見えた。Danielも「ダンサーには絶対できないことをやってくれる」と絶賛していた。
 
そして、東京へ出発する。
着いてすぐに三宅一生の事務所へ行き、最終のコスチュームチェックを受ける。
当日の準備をしているときには「緊張する」と言いながらもどこかわくわくしているような、その感情さえも楽しんでいるような表情をしていた。
 
わたしは代々木で行われた公演自体は見に行けなかったので、今回がほぼ初めての鑑賞だった。すぐに見に行けなかったことを後悔した。
と同時に、今回大きなスクリーンできれいな音でこの映像を見ることができてよかったと思った。
映像で見てこれだけ感動するものが、現地で見たら自分の感性はどうなってしまうのか、と思わせるほどの「作品」だった。
この「青森大学男子新体操部」公演は、スポーツ、アート、デザイン、エンターテイメント、サーカス……その全てであり、どれでもないような、『「青森大学男子新体操部」公演』というひとつのジャンルだった。横文字を羅列したが、実はすごく日本らしいものでもあった。「日本のサーカス」と言ってしまえば簡単かもしれないが、海外のサーカスには見られない繊細さがある。かといってサーカスを感じるかと言われるとそれもまた違う。強いて言うならば、「男子新体操が日本発祥ということを実感させられるもの」なのかもしれない。選手たちの技術や表現力だけでなく、そこに当てられる照明があって、そこに合わせる音楽があって、グラフィックがあって、コスチュームがあって、想いがあって、全てが絶妙に重なりあって調和している。調和してお互いを引き立て合う、そんな姿に「日本らしさ」を感じたのかもしれない。
 
 
公演自体の作品の素晴らしさだけでなく、映像ならではの効果も感じられた。
練習風景が公演の映像とリンクする場面はもちろん多く見られた。何よりも、彼らの想いが、演技に現れていることに気づかせてくれる。これは映画でなければなかなかわからないものである。特に中田先生の「過程を大切にしたい」という言葉そのものが、まさに演技に現れているように感じた。
おそらく、2度目に見るときにはまた違ったものを感じさせてくれる、そんな映画だと思う。
映画と、演技と、音楽と、彼らの人間性とを同時に感じる「作品」だった。五感全てを刺激させられる。
試写会でも、映像なのにも関わらず、その映像から聞こえてくるものと同じ拍手が湧いた。上映終了後のみならず、公演中ひとつひとつの演技の区切りで自然と手を叩きたくなるのだ。
ただのドキュメンタリー映画でもなく、ただの新体操でもなく、ただのショーでもない。
公演自体も簡単には表現できない作品だが、映像もあいまって本当にわけがわからなくなる。
人間の美しさを感じられる作品であることは確かだ。
その美しさにただただ引き込まれてしまう。
 
現にまた、何度でも見たいと思う。
 
【FLYING BODIES 上映スケジュール】※以下のサイトをご参照ください。
現在、東京(新宿・立川)、大阪(梅田)での上映が決定しています。
 
 
TEXT by umi   PHOTO by Norikazu OKAMOTO / Ayako SHIMIZU