2013全日本インカレ 男子団体準優勝 花園大学

 昨年に引き続き団体準優勝となった花園大学。例年、斬新な構成と複雑な動きで勝負をかけてきた同大学だが、今回は今までとは少し違った闘い方を見せた。

 前半は妖しげな雰囲気ただよう曲に合わせ、蛇動の動きなどで不可思議な空気を演じ、後半からは畳みかけるような曲の展開とともに、キレのある動きを披露。指先までそろえられた繊細な動きや、どこよりも脚を高く上げた美しいバランスなどは例年と同様に印象的だった。

 

 しかしそれ以上に印象的だったのが、実施の高さだった。動きのタイミング、音とよく合わせられた同時性は時にはっとするものがあった。構成に関しては、実のところ例年の方が凝った印象を受けていたのだが、今年はその分、動きや形を合わせることに注力してきたことが分かる内容だった。複雑な動きではどうしてもわずかなズレも「バラつき」として認識されがちだったが、今年は動きを比較的シンプルにした分、近年の花大の魅力である繊細な動きの同一性が映えた演技だった。これには西インカレとインカレの時期が近かったためにあまり凝った構成が出来なかったという事情があったのだが、期せずして花大のこれまでとは違った側面をみる結果となった。

 

 またこの高い実施は、大会前のチームの事情を知ると少しだけ価値を増す。大会直前、花大はちょっとした選択を迫られ、そして決断をしていた。

 インカレ直前の8月20日、花大の体育館で目にしたのは少し意外な練習風景だった。6月の西インカレ、花大の主力選手で組まれたAチームは、4年生1名、3年生2名、1年生3名という若さのあるチームだった。そのチームをひっぱっていた唯一の4年生で団体リーダーの、高堰(たかせき)翔平が練習から外れていたのだ。

 

 聞けば、2週間ほど前に練習中に手の小指を骨折。かねてから患っていた腱鞘炎と相まって、状態は芳しくなかったという。それでも演技ができないというレベルではなかったため、補欠の北原翔太(3年)と入れ替わりながら練習に参加していた。それが完全に北原と入れ替わるようになったのは、3日前のこと。決め手のひとつとなったのは、倒立だった。ケガの状態は、「多少無理すれば出られないことはない」ほどだと野田監督は話していたが、それでも高堰が出場を見合わせることにしたのは、両手で全体重を支える倒立で、小指の骨折は安定感を欠くものだったからだ。また、補欠の北原もレギュラーに入れても遜色ない実力の持ち主だったこと、ジャパンに向けて高堰を温存したいということも、今回の決定に至った理由だった。

 

 恐らく選手層の厚さから言えば、けが人が出ることはあまり問題ではないアクシデントと言っていいだろう。もし影響があるとすれば、それは「チーム力」に関してだ。今回の件で大きいのは、抜けることになったのが4年の高堰であるということ、そしてその決定を下したのが彼自身であるという点だ。

 最終学年となると、ひとつひとつの大会すべてに「最後の」という言葉がつく。その「最後の」インカレで、自ら戦線を抜けることを決めるのは容易ではなかったはずだ。

 

 決定を下す前、高堰は花園大の同学年で、今は大学を休学してシルク・ドゥ・ソレイユで活動する遠藤竜馬にスカイプで相談した。その時、遠藤が話したのは「自分次第じゃないの」という簡潔な内容だった。「自分ができるんなら出ればいいし、出きないなら出ない方がいい」。それはシンプルで、分かりやすく、しかしそれだけに残酷でもある。試合前、高堰は話していた。

 

「今でも団体に入りたいっていう気持ちはありますけど……ただ、花大のことを応援してくれる人もたくさんいるので。自分が『最後だから出なきゃ』っていうのも違うなって」

 

そうして、高堰が団体メンバーの前で「今回は(北原)翔太でいくから」と決定を下したとき、当の北原の胸中は複雑だった。

 

「自分としてはチャンスと思うところもあったんですけど、翔平さんは最後(のインカレ)だから団体にいて欲しかったっていうのもあって……複雑でした」(北原)

 

 決定を受けたのはインカレ出発1週間ほど前。北原がたとえ心づもりをしていたとしても、メンバーを入れ替えたチームがまとまりを発揮するには時間が足りないように思えた。だが、実はそうした差し迫った状況は、メンバーを「まとまらざるを得ない」心境にもさせる。不測の事態は、チーム力を生むことがあるのだ。そして実際に花大のメンバーたちは、各々がそうした心境にあるようだった。

 

 高堰が抜けてから団体をまとめているのが、3年の朝留涼太。チームを盛り上げる力も、緊張感を与える力も持っている、中心に据えるにはうってつけの選手だ。高堰についてこう話す。

 

「翔平さんは去年の末から4年生一人になって、たぶん辛かったと思うんですけど、頑張っていたので……一緒に大会出て結果を残したかったです。でも今は、やるしかないな、と」(朝留)

 

 若いチームなだけに、急なメンバー変更は1年生への影響も懸念される。しかし3年の一藤如月が「1回生だけど、高校から厳しい練習をしてきたのが伝わってくるような選手たち」と評するように、1年生メンバーは西インカレでも、そしてインカレ直前の練習でも実に堂々とした動きを見せていた。

 1年の三井所(みいしょ)智也は「翔平さんが抜けたことによって、新しい雰囲気をつくっていかないといけない。また一丸になって戦わないと」と話し、同じく1年の石川航大は「気持ちは複雑なんですが」としながらも「今できることをやるしかない。自分がやることは変わらないので」といい意味での切り替えを見せた。平岡貴士(あつし)にいたっては、1年生ながら演技冒頭で最大の見せ場を担当。第一タンブリングでムーンサルトを披露したのだが、予選ではまるでフロアに吸い込まれるように、ピタリと微動だにせずに着地を決めて見せた。

 

 短期間に急速なまとまりを強いられたチーム。しかし迎えた本番では、そうしたことを感じさせないほどに高いパフォーマンスを見せた。これまで斬新な構成を主な強みとしてきた花大だったが、今回は「実施をより高めて戦う」という、新たな武器を手に入れた大会でもあった。全日本選手権ではどのような闘いを見せるのか、今から期待は高まる。

●2013全日本インカレ花園大学団体動画

http://www.youtube.com/watch?v=TPz9wBTeh58&feature=c4-overview&list=UURwQOtw3u0nZBCA_agw-88g

 

Text by Izumi YOKOTA  Photo by Ayako SHIMIZU