指導者の道を歩き始めた藤岡里沙乃の底知れぬポテンシャル

5月16日、朝起きたら、藤岡里沙乃さんのFacebookが更新されていた。

Facebookにはあまり投稿しない彼女にしては珍しい長文のその記事は、非常に心に沁みるものだった。

紹介することの承諾をもらったので、ここにリンクをはっておく。今の、新体操のルールは手具操作がとにかく忙しく、おまけに実施の減点も非常に厳密だ。「そのくらいで引く?」という容赦ないものになっている。

この苛酷なルールのもとでは、表現を放棄したくなったり、逆に、勝負度外視で表現だけに走りたくもなると思う。

しかし、やはり「新体操」を、ましてや競技でやっている以上、どちらも捨てたくないし、表現を重視するとはいっても、そこは「技術」あってのものだ、ということを、あの藤岡里沙乃さんから説かれると、説得力あることこのうえない。ぜひご一読を。

※藤岡里沙乃さんFacebook

https://www.facebook.com/risa.no.vanira?fref=nf&__tn__=%2Cdm-R-R&eid=ARD5xd14zysUCL3vTqsd9KCvwfXL3ovbMkgnwk-xkBgU8lq01xOcd03YtfhBpciD43JC6V7D53APDVUf

 

藤岡里沙乃さんは、2019年全日本選手権をもって現役を引退した。

しかし、その後も、さまざまな場面で新体操に関わり続けている。表現力には長けた踊り手だっただけに、エンターティンメントのほうにいくのか? とも思われたが、今のところ、「自分が踊るのも好きだったが、教えるのも好き」という言葉のとおり、指導者としての道を歩み始めている。

今年度は母校である東京女子体育大学のコーチとして後進の指導にあたり、状況に応じては講習会などの講師も務めていくという。

 

今年の2月16日、福岡大学で行われた東京女子体育大学新体操競技部講演会主催の講習会にも、藤岡さんの姿があった。

参加者を何グループかに分け、午前中はバレエや動きの講習を藤岡さんが受け持っていたが、そのレッスンは、目を見張る素晴らしさだった。

バレエレッスンひとつでも、機械的にバレエの動きを行うのではなく、まるで一篇の踊りを見ているような、滑らかさ、たおやかさなのだ。

腕を上に挙げるひとつの動き、首を傾けるしぐさひとつまで、藤岡さんの動きには意味がある。

演技中はもちろんそうだったが、それはバレエレッスンのときからそうだったのだ! と指導ぶりから感じることができた。

年齢が一番下のグループのレッスンで腕の動きを教えるときには、単に「伸ばす」「丸くする」と指示するのではなく、「落ち葉を拾うように腕を伸ばす」「落ち葉を胸の前にかかえて」など、イメージをふくらませて動くことを教える。

そして、なんと言っても、その言葉がけの表現力の豊かなこと! 口をはっきり動かし、くるくるとよく表情を変えながら、はじめは緊張気味だった子ども達もどんどん巻き込まれていくような魅力的な指導だった。

思わず、「教え方とても上手ですね」と声をかけると、本人は「そうですか。うれしい!」と満面の笑顔になりながら、「教えることは大好きなんです。でも、私の教え方は、ほとんどがまだ秋山(エリカ)先生の真似です。秋山先生が、表現を大切にする教え方をしてくださって、それが私はとても好きで、楽しかったので、私が教える子ども達にも楽しいと感じてほしいな、と思ってやっています。」と言う。

その気持ちは十分に伝わっていたと思う。

藤岡さんのレッスンでは、はじめは少し照れくさそうにしていた子もどんどん気持ちが入っていく。気持ちが入れば動きも変わっていく。

後半で行われたダンスレッスンなど、小学生まで「りさの先生のように」美しく、キュートに、セクシーさまで乗り移ったような踊りっぷりを見せていた。ましてや、高校生になると、みんなノリノリ。藤岡さんも、「こうするとエロさが増すよ~」と妖艶さの醸し出し方まで伝授。

最後に行われた藤岡さんの模範演技のときは、助手を務めていた福岡大学の男子選手まで、セクシーさ全開の演技を、みんなの前で披露してくれた。

学ぶことも多いうえに、とにかく楽しい! そんなレッスンだった。

講習会の最後には、参加者の中から選ばれた選手、チームの模範演技があり、そのトリとして藤岡さんが徒手演技を披露。

これはまったくの即興演技だったそうだが、曲調をしっかりとらえた素晴らしい演技で、観客は魅了された。

「1回の講習で教えられることは限られているけれど、私のレッスンを受けた子が一人でも、踊るのって楽しいな、と感じてくれたらいいなと思ってやっています。」

その願いはきっと叶っている。それも一人と言わず、何人もだ。

 

この講習会後から、コロナウィルスの感染拡大が進み、あらゆる大会も演技会もなくなり、講習会などもまったくできない状況になってしまった。

なので、藤岡さんのレッスンを受ける機会は、当分はなかなかもてないだろうとは思うが、機会があればぜひ多くの人に受けてもらいたいと思うレッスンだった。

外出自粛が始まってから精力的に動画をアップしている東京女子体育大学の秋山エリカ監督のYouTubeチャンネルだが、こちらにも藤岡さん(当時大学4年生)がモデルを務めるウォーミングアップの動画がある。

https://www.youtube.com/watch?v=ZYaWcwhC4Hg

おそらく新体操を習っている子なら、誰もが「やったことある!」「これならできる!」と思うだろう、基本中の基本の動きだが、藤岡さんの動きをしっかり見てほしい。ただ決められたように動いているのではない、始点と終点が合っていればそれでOKではない、同じ動きでもどこに気をつけて、どう工夫しているのかよく観察すれば、自分の動きをブラッシュアップするヒントが見つかるはずだ。

 

今後の競技会で「藤岡選手」の演技が見られないことは、残念なことこのうえないが、この先も、指導を通じて、さらには、競技ではない場であれば、自身の踊りでも、まだまだ藤岡里沙乃さんには楽しませてもらえそうだ。また、新体操の現役選手たちにとっては、たくさんの気づきを与えてくれる存在で、い続けてくれるに違いない。

彼女のこれからに、おおいに期待したい。

※藤岡里沙乃さんInstagram  (過去の演技なども公開中)

https://www.instagram.com/10_risano_17/?hl=ja

TEXT & PHOTO:Keiko SHIINA