初代チャイルド女王の現在~本山美鈴(G-Rockets)

今年で17回目を迎えた「全日本チャイルド選手権」は、今や出場者が800人近い(3~6年生のみで)おばけ大会となったが、その第1回が行われたのは、1998年。会場は、長野県の松本市総合体育館だった。その記念すべき第1回大会の5・6年の部で優勝したのが、当時イオンに所属していた本山美鈴だった。

チャイルド競技のまだ創成期であり、現在から見ればつたない演技の選手もまだ多かった時代だが、上位選手たちの演技はかなりハイレベルで、なかでもこの本山選手の演技は、小学生とは思えないレベルの能力の高さ、大人びた表現力を感じさせるものだった。

まだ、「チャイルド競技とはなんぞや」が確立していなかった時期、最初にその理想形を示して見せた選手だったと言うことができるだろう。

その本山美鈴が、今も「踊っている」と聞いて取材に行った。

京成線の堀切菖蒲園。下町情緒あふれる街の中に建つ倉庫を利用したスタジオで、彼女は稽古に励んでいた。

 

体操、新体操経験者が多く活躍している女性だけのアクロバットダンスカンパニー「G-Rockets」の一員として本山美鈴は、この6年間、多くのステージに立っていた。

初代のチャイルド女王になったあと、ジュニア時代には全日本ジュニアにも出場していた彼女がどんな経緯で、このステージにたどりついたのか、話を聞いてみた。

 

「私は、新体操は高校までで卒業して、大学では大好きだった英語を学び、サークルではダンス三昧の4年間を過ごしました。大学時代は、新体操とはまったく無縁でしたが、離れているうちに、やっぱり自分は新体操が好きだな、という気持ちは強くなりました。また、ダンスを通して、お客さんに見てもらうことがどんどん楽しくなってきて。

 大学を卒業したら、普通に就職して得意の英語を生かした仕事をしてみたという気持ちもありましたが、やはり体の動く今しかできないことをやりたい! と卒業と同時に、G-Rocketsに飛び込みました。」

それから6年。

NHK紅白歌合戦やものまねアーティスト・コロッケのショーなど、大きな舞台も数多く経験してきたというが、いわゆる「普通の就職」に比べると、不安定な部分も多い世界だ。苦労や葛藤などはなかったのだろうか。

 

「葛藤は…ありましたよ。あのとき就職していたら、まったく違う世界にいたんだろうな、と考えたこともあります。

 それでも、今は、他の人には経験できないことをやれていると思うし、この世界もかなりハードだし、厳しいのでこの経験があれば、この先、違う世界で生きていくことになったとしても、なんでもできる、という自信はついたと思います。」

この6年間で、やっていてよかった! と思った瞬間は? と聞いてみた。

「2013年のコロッケさんのショーで、ソロを踊らせてもらったときです。

それも、クラブとリボン。新体操の演技をコロッケさんのステージでやらせてもらえたんです。自分が新体操をやっていてよかった、とも思ったし、新体操がエンターティメントにも通用するんだ、とも思えた貴重な経験でした。」

 

G-Rocketsで経験してきたことを、しっかり自分の成長の糧にしている本山美鈴の「これから」がいっそう楽しみになってきたが、彼女自身、これからのことをどう考えているのだろう。

「この6年間は、G-Rocketsの活動以外にもいろんなことをやってきました。新体操スクールの先生や、ダンスの指導、英会話レッスンまで。それぞれに面白いしやりがいもある。なので、自分にとってはG-Rocketsもゴールではないと思います。

 でも、ステージでパフォーマンスを見せることには、試合とは違う緊張感があるし、面白いんです。お客さんの反応が直に見えるのがすごくいいし、失敗を失敗に見せない工夫もできるようになります。

せっかくここまでやってきたのだから、と思うと、将来もなんらかの形で、こういう業界にはかかわっていたいかな、とは思っています。ダンスカンパニーとかキッズダンスチームを立ち上げるとか、そういうのもありかな、と。でも、自分が動ける間は、まだまだステージに立っていたいです。」

 取材に伺った日に振付・指導をされていた村松朋子氏も、G-Rocketsの創立メンバーで顧問の山中陽子氏も、口をそろえて体操、新体操経験者のもつパフォーマーとしての可能性を高く評価する。

「日本では、体操、新体操を生かしたパフォーマンスでプロとしてやっていくことはなかなか難しいですが、G-Rocketsだけを見ても、活躍の場が広がってきてはいます。

 現役選手のころのように十分な練習ができる環境ではないかもしれませんが、そこまでに築いてきた基盤のある子たちは、対応できるんです。また、競技での実績の有無には、あまり関係なくやれるのもパフォーマーの世界のよいところで、競技成績には恵まれていなくても活躍できる人は少なくないです。

 やってみたい! と思う人にはぜひチャレンジしてほしいです。」

 シルク・ドゥ・ソレイユに代表されるアスリートたちが活躍するパフォーマンス集団は、日本でも増えつつある。G-Rocketsをはじめとした日本のパフォーマンスチームたちが競演する『DOOR』というGYMNASTICS ART FESTAも、3月27日(金)に、舞浜のアンフィシアターにて開催される。本山美鈴ももちろん、このステージに出演する。

「セカンドステージ」で輝く本山美鈴の、そして多くの体操、新体操の卒業生たちの躍動する姿を見に、ぜひ足を運んでもらいたい。

 

●『DOOR』の情報はこちら(チケット残りわずか) ⇒  http://gym-art.com/

●G-Rocketsとは…

http://www.g-rockets.jp/

https://www.youtube.com/user/Grockets/videos

 

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA