「二足のわらじ」~樟蔭中・高等学校

本日(8月26日)より、東京体育館において第17回全日本新体操クラブ団体選手権が行われる。

ジュニアからシニアまで230チーム、1535名が出場する全国規模の団体競技の大会だが、17回目を迎える今回、新たな試みが始まった。

日本国内で急速に普及、発展している「AGG」が新部門として加わったのだ。

記念すべき第1回のAGG部門出場チームは、全カテゴリ合計で48チーム。初回にしてこれだけの参加チームを集められたのは、ここに至るまでにAGG関係者が地道に種を撒いてきたことの現れと言えるだろう。今大会を通してさらに全国にAGGの輪は広がり、ますます日本のAGGがレベルアップしていくに違いない。東京開催、また新体操競技との共催なだけにより多くの人に、AGGという競技を見てもらえるチャンスだと思う。今までAGGにはなじみのなかった指導者、選手もこの機会にぜひAGGの演技を実際に見てほしい。そして、ぜひ取り入れてみてほしい。

とは言え、「新体操の練習だけでも忙しいからAGGまでは無理」と考えているチームも多いだろう。そんな人たちにぜひ注目してほしいチームが今大会には出場している。

AGG・U16に出場する「樟蔭ジュニア東大阪教室」AGG・シニアに出場する「樟蔭ジュニア」「樟蔭ジュニア東大阪教室」、そして、新体操シニア団体に出場する「樟蔭ジュニア」だ。これらは、大阪府の樟蔭中・高校の選手たちによるチームであり、彼女たちの多くは新体操団体とAGGの選手を兼任している。

シニアの選手たちは、1日目には新体操団体に出場し、2日目はAGGシニア部門に出場する。つまり、両方の作品を練習してきている。

今大会は8月末の開催だ。彼女たちは、この夏の間、ずっと新体操とAGG、その両方で試合に向けた練習をやってきた。暑い暑い夏の大阪で、だ。

7月24日に、樟蔭の練習を見に行った。

まず驚いたのはその部員数の多さだ。この日は、中高いっしょに練習していたので体育館の半面でも狭く感じるくらいの人数がいた。

練習の前半は、身体作り、ストレッチや筋トレ、体幹トレーニングなどをじっくり行い、その後、アップに入る。

このあたりは、新体操もAGGも共通している部分なので、その日がどちらの練習だとしても(両方やるとしても)変わりはない。

人数が多いだけに、後輩たちは、先輩たちの動きを見て真似する、覚えるという効果がありそうな、そんな賑やかな練習ぶりだった。

この日は、午前中のうちに通しまでやるというスケジュールで練習が進んでおり、アップを終えると選手たちはチームごとに分かれ、それぞれに確認を始める。フロアマットは1面だけだが、空いている板張りの部分に、何チーム分かの選手たちがかたまりになって動きを合わせたり、話し合いをしたりしている。

この日は、まずはAGGをやるということで、手具がないからまだよいが、これで全員が手具をもっていたら、大変だろう。それくらい、ここには部員がいる。スペース的な不自由はあるかもしれないが、みんなで切磋琢磨できる活気に溢れた雰囲気がとてもいい。

試合を控えているチーム、選手(このときは目前にクラブ選手権を控えていた)がたくさんいるので、一部の選手だけに指導が偏ることなく、次々にフロアに上がる順番が回ってくる。フロア外にいる時間も、次にフロアに上がったときにはよりよい通しができるようにみんな懸命に練習している。

たとえ目の前の目標(試合など)がなくたって、練習には懸命になるべきだ。

それは正論だし、それができる選手は伸びる。

ただ、ほとんどの選手はそこまで強くない。目の前の目標がなければ気が緩むこともあれば、試合を控えた選手ばかりが先生に見てもらっている、となれば腐ったりもする。

そうなってしまう選手の弱さを責めるだけでなく、そうならないような環境を用意できるかどうかそれは指導者の器量にかかっている。ここには、みんなが前向きになれる環境がある、と感じる練習ぶりだった。

さらに驚いたのは、彼女たちのAGGの演技が、そろいもそろって素晴らしいのだ。

日本ではまだ歴史の浅いAGGだが、樟蔭はその中でもさきがけ的な役割を果たしてきた学校だ。すでに、ジュニアもシニアも国際大会出場経験もある。

日本のAGGは、まだ新体操選手たちが、「AGGもやってみた」という段階にあり、いわゆるAGGらしい表現、という面ではやや苦労していた。(歴史の浅さを考えれば無理もないが)近年はそこが飛躍的に向上してきたということで、世界での評価も上がってきているが、樟蔭のAGGは、その意味において限りなく本物のAGGだ。

フロアに上がった瞬間から、作品の世界に入り込む。

動きがなめらかで、つながりがあり、まさに空気を動かすような演技、をする。

華やかで明るい曲調のチームは、きらきらと煌めくような表情と動きを見せ、

迫力のあるスリリングな曲調のチームの動きはダイナミックで挑むように。

手具でのミスがつきものの新体操ではなかなかたどりつけない、伸びやかさがあり、表現にも深みが出る。だから、作品を見終えたあとに余韻が残る。

そんな演技が、次々と披露されていく。

指導者から見れば、「まだまだ」と修正箇所はいくらでもあるだろうが、たとえ練習着であっても、表現する心意気は本番さながらの演技は、練習とはいえ見る者の心動かすだけの力を十分もっていた。

「AGGってやっぱりステキだな」と感じさせる練習だったが、特筆すべきは、彼女たちの新体操だ。

この日は、本来はAGGの練習日とのことだったが、特別に新体操の団体演技も見せてもらった。ほとんどAGGの練習をしていたところに急に新体操を割り込ませてもらったため、さすがにノーミス通しというわけにはいかなかった。

が、感心したのは、その前に見ていたAGGの演技で感じられた、表現力、動きのなめらかさは、新体操になっても生きていた。なめらかさに関しては、手具操作によって多少は損なう面はあったが、表現力の豊かさは変わらなかった。

個人演技でもそうだ。

今の選手たちの演技は、概ね表現力は豊かになってきている。

ただ、その深さや巧さには差がある。どんな表情を作っていても、作りものに見えてしまう選手もいれば、内面からにじみ出ているように感じさせられる選手もいる。

大阪樟蔭の選手たちには、後者が多かった。新体操のレベルとしてはまちまちなのだろうとは思うし、そのときの出来が悪ければ上位にいけるわけではないかもしれない、とも思うが、「表現者」として、よい成長をしている過程にある選手たちなのだ、と感じられるのだ。

隣ではバトントワリング部が練習をしていた。新体操以外にもダンス部やポンポンチア部もある。「表現スポーツ」を学ぶ場としては、このうえない環境なのだろう。

だから、ここでは「新体操」と「AGG」も同じ表現スポーツとして違和感なく両立できているのだ。そして、それぞれが相乗効果を生んで、樟蔭の新体操にはAGG効果が如実に現れてきているし、彼女たちのAGGがその基礎力の高さを評価されるのは、新体操で培った土台があるからだ。

今回のクラブ団体選手権で、AGGを見て、「うちのクラブ(部活)でもやってみたい」と思った人は、ぜひ挑戦してほしいと思う。

AGGに取り組むことは、新体操をあきらめることではない。

きっと両立できるし、両方によい影響がある。

そのモデルケースとしての樟蔭の演技に、ぜひ注目してほしい。

 

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA