「女子新体操界の元気印」~修文大学(愛知県)

今日から競技が始まる女子団体で注目したいチームがある。

修文大学だ。

かつての一宮女子短期大学で、新体操部は今年で創部17年目。

そこそこ歴史はあるが、正直「強豪校」とは言えない。

そんなポジショニングだった修文大学が、飛躍したのは去年の全日本インカレだった。

有力と思われた東京女子体育大学や国士舘大学がミスを連発する中、どちらの種目も手堅く大きく崩れることなく、元気はつらつ! 

大学生としてはちょっと幼く見えてしまうくらいのチャーミングな演技でリボン5が4位、フープ&クラブ5位にまとめ、

団体総合5位に入賞し、全日本選手権出場を果たしたのだ。

このときのことを、現在のキャプテン・秋山可奈子に話を訊くと、

「去年のリーダーだった宮城汐里とは同級生で同じ寮生だったのでいっしょにいる時間がすごく長くて、2人で“絶対ジャパンに行きたい”と言ってました。練習中にも、ジャパンと口に出していうようにして、気持ちを高めていきました。なにしろ、誰もジャパンなんて出たことなかったので。

ジャパン出場が決まったときは、すごくうれしかったけど、間違いじゃないのかと何回も確認して。そして、本当だとわかってからは、そのときのメンバーでまだいっしょにやれるんだ、というのが一番うれしかったですね。」

と今でもうれしそうに話してくれた。

中村恵子監督は、「うちは、新体操辞めようとしていた子たちの集まりなんです」と笑う。

高校までの実績のある選手はほとんどいない。強豪チームはいても、「曲かけ」や「貴重品係」だった子が多いのだという。

 

大学でも新体操を続ける自信はない。

新体操には区切りをつけて進路を考えよう。

 

そう思いながら、どこかで「このまま新体操を終えたら悔いが残る」と思っている子たちが集まってくる。

強豪大学に行けるような選手は獲得できないから、というよりも、中村監督は、そういう子達が、「大学で新体操やってよかった」と

思えるような場所にしたいと思い、ここまでやってきたのだ。

平成12年に創部したときから、修文の監督は変わっていない。今のチームカラーは、まさに中村監督が創り上げてきたものだ。

「うちでは、日本一を目指すとか、ジャパン出場! などはなかなか叶えられません。

だけど、新体操を通じて、成長できたり、新体操の楽しさを知ることはできるようにしたいと思っています。

ずっと新体操をやってはきていても、選手たちは意見を出し合ったり、協力し合うことがうまくできない。

自信のない子たちだから、最初は目線を上げて演技することもできなかったりします。

でも、そうじゃなくて、ここではみんなで思ったことを言い合って、やっていこう! と

しつこいくらい繰り返して、あの手この手でやってきています。」

そんな中村監督の思いは、しっかり選手に伝わっている。秋山は言う。

「先生に練習を見てもらえるのは週末だけなので、平日は自分達で考えて練習しなければいけません。

練習場所も平日は狭くて投げ受けの練習もできない体育館なので、環境には恵まれているとは言えないかもしれません。

でも、自分達で何が必要なのかを考えて、話し合って練習できるのはすごくいい。押しつけられてやらされるのではない練習だから身も入るし、それでできるようになったことを、先生に見せよう! 張り合いがあるんです。」

この先、社会に出てからもしっかり自立していける大人になってほしいと願う中村監督の要求は厳しい。

「もっと全員がチームを高めるために、自分から考えられないの」と、叱咤激励もしていた。

まだまだ選手たちには足りないところは多いのだろうが、入学当時を思えば、ずい分変わってきているはずだ。

「学内の行事などの実行委員にもよく声がかかるんです。けっこう頼りにはされる子たちなので。」

と中村監督は笑顔になる。

「小さい大学なので、みんなが新体操部を知っていて、応援もしてくれる。それは、彼女たちが学校の中でも頑張っている存在として認められているからです。」

たしかに、取材に伺った日も、大学の職員の方がなにくれと練習場に顔を出されていた。

みな、用事をすませては監督や選手たちに「頑張って」と笑顔で声をかけていく。そんな雰囲気の大学なのだ。

今年が最後のインカレとなる秋山も、ここで新体操をやってことに悔いはない。

「高校生のときに、新体操ではなかなかうまくいかなかったので、辞めたいとも思ったんですが、

そのときの辞めたい気持ちは、自分に対する甘えだったと思うんです。お金も時間もかかる新体操を私が続けるために

たくさん協力してくれた家族のためにも、逃げるような形で辞めるのは違う、と思って、続けることにしました。」

その結果、17年間、新体操を続けることになった。夢だったジャパンにも出場できた。

「大学で続けたことで、試合に出られなかったころには味わえなかった選手としての楽しさがありました。

もちろんつらいこともありますが、やはり試合に出て、いい演技ができたときの達成感は、以前は感じたことがなかったものでした。

やってきてよかった、続けてよかったと思います。

もしもジュニアのときに望むような結果が得られていたら、そこで辞めていたかもしれませんが、うまくいかなかったから悔しくて、弱い自分を変えたくてここまで続けてこれたので、きっとこれでよかったんだと思います。」

と語る秋山の顔は晴れ晴れとしていた。

最後のインカレでの演技について訊いてみると、

「ボール&ロープは、いつもの修文らしく明るく元気に、楽しすぎる! 気持ちを表現したいです。

フープ5は、真逆で今までにない修文を見せたいと思います。女性らしくちょっとセクシーな感じ。

曲を聴いたとき、できるかなあ、と思いましたが、みんなけっこうのってきて挑戦してみよう! となりました。」

と雄弁に語ってくれた。

新体操を長く続けていても、達成感を得る機会に恵まれないと、なかなか自分に自信がもてないものだ。

秋山もかつてはそうだったのかもしれない。

が、今の彼女は違う。自分の考えをこれだけ堂々と語れるようになった。

演技中も笑顔がきらきら弾けている。

 

昨年こそは、ジャパン出場を成し遂げたが、いきなり修文大学が強くなったというわけではない。

今年どうなるのか、なんてやってみなければわからない。

 

だが、試合の結果がどうだとしても、このチームのこの明るさは本物だ。

はじめは視線を上げられなかった選手でも、堂々と前を向いて、弾ける笑顔で踊れるようになる。

それはジャパン出場よりもずっと大切なことだ。

今年の修文もきっと。

見ているほうもワクワクするような、弾ける演技を見せてくれるだろう。

フープではちょっとセクシーさも演じて見せるらしいが。

どんな曲調でも表現でも、そこには間違いなく「新体操の楽しさ」がある。

修文大学は、そんなチームだ。

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA