2017全国高校総体に向けて⑧~中村学園女子高校(福岡県)

6月の九州ブロック大会で見た中村学園の団体作品がとてもよかった、と感じた。

その試合では、実施もよかったので、「点数もけっこう出るかも」とは思ったが、順位や点数とは関係なく、

とても好感のもてる演技だったのだ。

果たして、中村学園はその演技で、九州大会優勝を勝ち取っていた。

なんと九州大会での団体優勝は初、とのことだ。

そんな輝かしい結果がついてくるとは思わずに私は見ていたのだが、この演技をとてもステキだと感じたのは

おそらくとても「幸福感」のある演技だったからだと思う。

自己肯定感と言ってもいい。

きっとこの選手たちは、新体操が大好きなんだろうな、と思えたし、新体操をやっている自分のことも好きなんだろうと思った。

そんな演技だったのだ。

思えば、数年前から九州の試合や講習会などで見た中村学園の選手たちはいつもとても楽しそうだった。

人数も多く、競争も厳しいのではないかと思うが、「競争相手」というより「仲間」なんだろうな、

と感じさせる雰囲気があった。みんな踊るのが好きそうで、講習会のダンス講習でもひときわ張り切って踊っていた。

そんな「楽しい空気」を持ちながら、今年は高校総体にも出場。先輩たちの悲願だったという九州大会優勝も成し遂げた中村学園女子高校を訪ねてみた。

訪ねたのは8月5日と、山形への出発間近な慌しく、そして猛暑の日だった。

この日は、福岡県のジュニアクラブも練習しに中村学園に来ていた。

九州小学生大会や九州中体連に出場するジュニア選手たちもいっしょに、「壮行演技会」を行うのだという。

決して広くはない体育館にはパイプ椅子が並べられ、観覧に来た保護者たちが座り始めていた。

 

本番用のフロアをジュニアと高校生が譲り合って使っていた。

「試合を控えている」という意味では、どちらも同じ。高校生がジュニアを尊重している姿は好ましかった。

そして、この日、私はあの九州大会で見た作品をもう一度、見ることができた。

壮行演技会での通し演技はもちろん、その前に行われていた練習でも見せてもらった。

そうしてつくづく感じたのが、中村学園の選手たちが、この曲(ショスタコビッチ「革命」)をよく理解し、自分たちなりの意味やストーリーをもって演じているということだった。

終盤で急に曲調が変わるのだが、そのときの選手たちの表情や動きの変化。

これが、絶妙なのだ。

単に曲の変化に合わせた、だけに見えない。

この曲が描き出す世界の中で、彼女たちは、あの変調の瞬間に別人格になるのだろう。それが演技に見事に表現されている。

前半では、明るい晴れやかな表情を見せることが多いだけに、終盤のこの変化にはインパクトがある。

もともとは笑顔のよく似合う、美しくかわいらしいイメージのチームであり、演技だ。

それが、最後の30秒くらいだろうか、突然、まったく違うイメージになる。

そこまでの笑顔が輝いていれば輝いているほど、その変化が強烈な印象となって残る。

前監督の山野孝子先生は、「新体操は芸術だから。表現するスポーツだから。私は表現のない演技を選手たちにはさせたくない」と明言された。

現監督の赤司真麻も、「表現に関しては山野先生がこと細かく指導してくださっています」と言う。

それはおそらく中村学園の伝統、なのだろう。(オリンピアンで表現力には定評のあった秋山エリカも中村学園の出身)

現在の部員は29人だという中村学園。

赤司監督は、おそらく「日本一選手と見分けのつかない監督」だ。

まだまだ若い赤司監督だが、年齢以上に若く見えるので、本当に選手の1人のようだ。

見た目だけでなく、雰囲気にも監督然とした威圧感がない。

このキャラクターだと、もしかしたら、少し頼りなく見えることもあるかもしれない。

それでも、こんなふわっとした笑顔のステキな監督だから、今の中村学園のチームカラーがあるのだろうと思った。

のびやかな、選手たちの演技は、こういったのびのびとした明るい雰囲気の中でこそ培われたきたのだ。

この日も、大勢のジュニア選手たちに「あこがれの中村学園のおねえさん達」として熱いまなざしで見つめられ、

その期待に応える演技をしっかりと見せていた彼女たちは、きっと「中村学園で新体操をやっている自分」のことが好きだと思う。

ここはきっとそう思える場所なのだ。

演技をしていた5人のメンバーはもとより、保護者席の後ろに並んで立って、どのチームにも精一杯の声援をおくっていた

レギュラー外の選手たち。彼女たちもまた、今回の試合では応援要員だとしても、控え選手だとしても

きっとこのチームが好きでたまらないのだろう。

中村学園の体育館は決して広くはなかった。それも新体操の専用ではないというから、練習場所の確保には苦労もあるに違いない。

だから、「部員が増えるのは嬉しいですが、あまり多いと場所が・・・」と赤司監督は言うが、それでも「中村学園で新体操をやりたい!」と言うジュニア選手は増えているそうだ。

 

新体操の練習にはつらいことも多い。

もちろん、この中村学園でもつらく、厳しい練習もあると思う。

ただ、それでも。

「新体操が好きだ。楽しい。」という気持ちを失わせないチーム作り、がここではできているように感じた。

練習を見て感じただけでなく、その演技から、それが伝わってきたのだ。

明日は高校総体団体競技が行われる。

緊張や気負いも多少はあるかもしれないが、できることならば、彼女たちが「いつも通り」に、あのキラキラした空気感のある演技をやり切ってくれればと思う。

彼女たちはおそらく、順位はさておき、自分たちの自分たちらしい演技ができたときには、九州大会同様、輝く笑顔でフロアから降りてくるだろう。

全国高校総体という舞台で、彼女たちのその笑顔をぜひ見たいものだ。

 

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA