2017全国高校総体に向けて①~済美高校(岐阜県)

「機は熟した」~10年目の団体全国制覇を目指して~

岐阜県の済美高校は、臼井優華、安藤梨友などの高校チャンピオンを輩出しているが、じつは、団体での高校総体出場は今年が2回目だ。

初出場は、昨年。そのときの成績は、10位だった。

2017年になってからは高校選抜にも出場し、6位。5月の団体選手権では2位になり、すでに全日本選手権の出場権も獲得している。

 

OKB体操クラブ(旧:NPOぎふ新体操クラブ)の選手たちによって構成される済美高校の団体は、6人揃いさえすれば、すぐさま全国レベルになるだろうとは

誰もが予想していた。2012年は、4人編成ではあったが、高校総体出場をつかもうとチャレンジもした。

しかし、さすがにその夢はかなわず、後輩たちに託した「高校総体出場」の夢は、ついに昨年、実現した。

しかし、近年まれにみるハイレベルな大会だったとはいえ、昨年の10位は、このチームにとって決して満足のいく結果ではなかった。

細かい引きどころはあったにせよ、大きくミスで崩れたわけでもない。タンブリングの強さなどは、出場チームの中でも屈指だったはずだ。

それでも10位。

 

選手たちの力はあるだけに、果たしてどう戦えば、彼らの力が最大限に発揮されるのか。

「団体」として認められ、評価されるのか。

ジュニア育成の先駆けともいえる功績をあげてきた指導者たちをもってしても、この壁はかなり高く感じられるものだったろう。

済美高校の団体作品は、ここ数年、変わっていなかった。

男子では珍しいことだが、より完成度を上げていくという意味では悪くない作戦だったと思う。

しかし、おそらく、昨年までの演技ではこれ以上の評価は望めない、と考えたのか。今年、済美高校は、作品をがらりと変えてきた。

 

単に、曲を変え、構成を変えただけではない。

そこで彼らが見せようとしているものは、昨年までとは明確に違っていた。

昨年まで、彼らは「岐阜の新体操」で勝負していた。作品も、斬新なものだった。

男子には珍しい明るくアップテンポな曲を使い、呼吸や動きのシンクロ性を見せつけるようなところがほとんどなかった。

動きも速く、決めポーズもない(短い)。男子新体操の団体演技は、よかった場合は「鳥肌がたつ」「息をのむ」と表現されることがあるが、

済美の団体は、そうではなかった。あくまでも軽やかで、見ていて楽しく、心地よい。

ただ、それでは「感動」には届きにくい。

昨年のインハイくらい、ほとんどのチームにミスががないと、最後は「感動させたもの勝ち」のようなところがある。

その勝負においては、たしかに昨年までの済美は後れをとっていた。

男子新体操の団体は、じつに評価が難しい。

年々、進化しているだけにノーミス勝負だったときに点数をつける役目にだけはなりたくないものだ、と思うほどだ。

 

済美高校の選手たちを個々に見れば、十分優勝争いをするに足る力は持っていると誰もが認めるに違いない。

タンブリングは強い。体操もしっかりとしている。同調性も、じつはかなり高い。

昨年までの作品では、動きの速さゆえに合わせにくかったにもかかわらず、かなり揃って見えていたのは、彼らが新体操を始めたときからずっと同じところで同じメンバーで同じ指導者たちとやってきたゆえではないかと思う。

「合わせよう」としなくても、合う。個人選手としての色は違っても、根本の体操の質が同じなのだ。

だから、彼らの演技は見ていて心地よい。しっかりした基礎もあるので、「惜しい」と思うところもない。

「悪いところなんてどこもない」

それでも勝てないのはなぜなのか?

「熱量」なのかな、と思う。

絶対に勝つ! 絶対に優勝する! 自分たちにはこれしかない! この1本に懸けてきた!

そんな熱が、優勝するチームより少しだけ欠けているのかもしれない。

そんな気がした。

 

キャプテンの岩田楓に、高校総体への抱負を聞くと、「優勝です」と迷いなく答えた。

「去年も優勝を目指していましたが、ミスもあったとはいえ、悔しい結果だったので」と続けた。

熱がないわけではない、のだ。むしろ、年々その思いは強固になってきているに違いない。

「今年の演技には、自分たちが考えた、自分たちのやりたいと思うこと、も取り入れてもらって、今までよりも受け身ではなく、自分たちの見せたい作品になっていると思います。」

と岩田は言う。

昨年の高校総体後、多くのアドバイスももらい、自分たちの演技に欠けている部分の指摘も受けた。

そういったものもすべて受け入れ、咀嚼して、彼らは今年のこの作品に懸けている。

 

今までは、「岐阜の新体操」で優勝を勝ち取ろうとしてきた。

済美高校としては、まだ今回が2回目の高校総体への挑戦だが、すでに彼らは、全日本ジュニアでさんざん「惜しい」ところで優勝を逃してきている。

2008年に初めて全日本ジュニアに団体で出場して、今年でちょうど10 年目になる。

全日本ジュニアでの団体成績は、9位(2008年)⇒4位(2009年)⇒7位(2008年)⇒4位(2011年)⇒5位(2012年)⇒3位(2013年)⇒3位(2014年)⇒2位(2015年)⇒17位(2016年)。

ジュニア団体を支えていたメンバーが一気に高校生になった昨年こそは順位をおとしているが、9年間連続出場。7回は入賞という輝かしい歴史を残している。

が、優勝していない。

この9年間にジュニアでは井原ジュニア3連覇⇒恵庭RG4連覇などもあったが、そこに「OKB」の名前が割って入ることはなかった。

いつ入ってもおかしくないように見えながら、わずかに及ばないという「悔しい歴史」でもあるのだ。

一方で、個人競技では、毎年のように岐阜の選手が優勝してきた。ジュニアでも高校総体でも。

そのため、見過ごしてしまわれがちだが、彼らはずっと「悔しい思い」を重ねてきている。

ことによっては、それが少しばかり「あきらめ」に変わりはじめていたことによる「熱量不足」があったのかもしれない。

 

しかし、今年の済美高校の演技からは、彼らが「本気で勝ちにきている」ことが伝わってくる。

「岐阜の新体操」で勝つのではなく、「男子新体操の頂点」を彼らは目指していることがわかる。

この日も、OKBアリーナでは、ジュニアから高校生、大学生までもが一緒に練習していた。

大学生の素晴らしい演技を後ろでじっと見つめているジュニア選手がいた。

今の高校生たちも、5年前、6年前はそうだった。彼らは、いつも臼井優華や安藤梨友が試合に向けてどうやって自分を磨き、追い込み、苦しみ、頂点をもぎとってきたのかを一番近くで見ていたのだ。

今度は、彼らがそれをやってのける番だ。

 

おそらく彼らが新体操を始めたその日からずっと見てきた坂本匡監督は、言った。

「団体で優勝をあきらめていたことなんて一度もない」

指導者はどこまでも本気だ。

その思いに、彼らも今年は本気で応えるに違いない。

 

PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA