2014南関東総体に向けて~青森山田高校(青森県)
いよいよ明日は、高校総体団体競技が行われる。
これまでに取材してきたチームでまだ紹介しきれていないところを、本番直前ではあるが載せていこうと思う。
まずは、男子団体の試技順1番・青森山田高校(青森県)。
先日、盛岡アイスアリーナでの合宿を取材に行き、今年の青森山田高校の作品を初めて見た。
正直なところ、ここ数年の青森山田とは、印象がかなり違う気がした。
なんというか「堅実」なのだ。
近年の青森山田の演技は、従来の男子新体操とは一線を画していた。体操というよりダンス?にも見える動きを取り入れたり、演劇のようだったり。「振付は誰で、音楽は誰」などという事前情報が流れたり。良くも悪くも、他のチームとは違う! という色を強く打ち出していた。
ところが今年は。
そう言えば、かつてないほど事前情報もなかった。
前もって、「今年の作品はすごいぞ」と煽るようなことは一切なかった。
そして。
盛岡合宿で見た今年の作品は、いい意味で「普通」だった。
インターハイに出場する高校生チームの演技だった。
決して「レベルが低い」という意味ではない。なにしろ、高校選抜では準優勝しているチームなのだから。
青森山田らしい洗練された美しい動きは健在だ。
同調性もある。タンブリングもシャープで、はっとするような交差などもある。
よい実施が出れば、上位争いには十分からんでくるだろうと思える演技だ。
だが、去年や一昨年とは、なにかが違う。
「今年のメンバーは、去年までの先輩たちのようにスター性があるわけではないので。」
3年生でキャプテンの佐久本歩夢はそう言った。
「1年前の佐賀インターハイに行っていたのは、自分だけなんです。1年前までは他のみんなは控え選手で、遠征にも連れていってもらってなかった。
ぼくらはそんな雑草チームです。
でも、そんなメンバーだからこそ、みんな下積み経験があるので、人の苦しみも理解できるし、成長する楽しさもわかる。
青森山田史上最弱なんて言われたこともありますが、一番、仲よくて、いいチームだと今では思っています。」
言われてみればそうだった。
昨年の青森山田は、永井直也、植野洵など3年生中心のチームで、そこに入っていたのは佐久本だけだった。
そして、去年の3年生が抜けてからのメンバーには、ジュニア時代に華々しい活躍をしていた選手が少なかった。
中学時代に少しやっていた、とか初心者に近いものもいた。
たしかに、「強豪・青森山田高校」の伝統を引き継ぐには、心もとないメンバーだったのだ。
しかし。
だからこそ、必死になれる力を彼らはもっていた。
それは、
「あんなに強かった先輩たちでもインターハイで勝つことはできなかった」のを近くで見てきたからだという。
「先輩たちよりもレベルがだんぜん低い自分たちは、とにかく必死に練習するしかなかった。」と。
でも、おかげで「自分たちにはのびしろがあることが感じられたし、のびていることを実感もできました。」
なにより。
「荒川先生との関係が変わりました。先輩たちの代のころは、先生から指示されて、あとは自分たちでやっておいて、という感じでした。
でも、今年はそれではできないメンバーだったので、先生も基礎から一緒にやってくれました。」
そういう佐久本は、ちょっと嬉しそうだった。
わざわざ千葉から青森に出てきたのに、いざ自分が3年生になるときに、「史上最悪」と言われるチームになってしまったのだ。
「自分は青森に何をしにきたんだろう?」
と思ったこともあるに違いないが、そのおかげで、今までの2年間では経験できなかった「チームの成長」を感じている。
そして、「先生」を近くに感じられるようになった。
それは、高校生にとっては、「いい経験」だったのではないかと思う。
監督の荒川栄は、
「今年は決して強いチームではありませんでした。
だけど、その分、ひたすら努力することはできるメンバーでした。
おかげで、今年は、監督らしい時間を過ごさせてもらいました。
このメンバーと過ごしたその時間が私にとっては、おもしろくて、楽しかった。
原点回帰したような感じでした。」
と言った。
今年の作品が、「堅実」や「普通」に見えたのはこういう理由だったのだ。
「強いチームではない」という言葉が、荒川からも佐久本からも何回も出てきた。
たしかに、そうなのかもしれない。
が、「強いチーム=いいチーム」というわけではない。
応援され、愛され、また、演技で人に感動を与えるのは、決して「強いチーム」だけではない。
今年の青森山田のように、泥臭く、愚直なまでに「努力」するチームこそは、
いちばん大切な「なにか」を得られるのだと思う。
8月9日、午前10時30分。
彼らの演技が始まる。
「青森山田らしく、トップバッターとして堂々と演技して、会場の雰囲気を一気に山田色にしたいです。」
佐久本歩夢のその言葉が現実になることを祈りたい。
PHOTO & TEXT:Keiko SHIINA