2014南関東総体に向けて~亀井理恵子(都立駒場高校)
2013年度全中7位、全日本ジュニア8位、2014年度ユースチャンピオンシップ8位と、ジュニア後半からぐいぐいと力をつけてきている選手。
それが亀井理恵子だ。
そして、ついに、まだ高校1年生ながら、見事、地元・東京開催のインターハイ個人代表の座を勝ち取った。
しかし、この選手、ほんの2年前までは、東京都の中でそれほど抜きんでた選手ではなかった。
中1の終わりころから、いい選手だな、と目にはとまっていたが、ミスで崩れてしまうこともあり、やや「惜しい」感じの選手だった時期もある。
が、ジュニア最後の年となった昨年あたりから、ぐっと安定感も増してきて、それに伴って競技成績もあがってきた。
今回のインターハイでもおおいに期待できる選手と言っていいだろう。
亀井がジュニア時代から所属する世田谷ジュニア新体操クラブの田中知亜季先生は、「中学のはじめのころは、少し背伸びをした内容の演技をさせていたせいで、本番でのミスが出てしまっていたところはあると思う」と言う。しかし、それが徐々にこなせるようになってきた。少しずつ自信をもって本番に臨めるようになってきた。それが、今の亀井理恵子なのだ。
「初めて試合に出たのが小学4年生のとき。もともとそれほど柔軟性があるほうでもありませんでした。」
そういう亀井は、多くの小学生があこがれるクラブチャイルド選手権にも出場していない。
おそらく、新体操選手としての自分に、とりたてて自信をもつでもないまま中学生になったのではないかと思う。
しかし、その分、のびしろ十分、「これから!」というやる気に満ちて、中学生になってのではないだろうか。
ところが、中学1年生のときに脚に怪我をしてしまう。
満足に練習ができない、開脚すらできない、という時期がかなり長く続いた。
「出遅れた」という焦りもあったのではないかと思う。
ところが不思議なもので、この怪我をしていた期間を経てから、亀井の開脚度は目に見えて大きくなったのだという。
現在の彼女を見れば、軽やかで、軽々と180度以上開くその開脚ジャンプは大きな強みだ。
成長期でもある12~13歳のときの、決して望んだわけではないペースダウン。それが功を奏したのだから、先のことはわからない。
もちろん、それはその療養期間に、亀井ができることをコツコツと努力し続けていたからこそ、なのだろうが。
地元開催のインターハイに向けての抱負を聞いてみた。
「たくさんの人が応援してくださっているので、それに応えられるように、今の自分の力を十分に発揮して、公開しない演技がしたいです。
高校2年生や3年生の選手に比べると、私はまだ経験不足なので、どこまでいけるかはわからないので、あまり考えすぎずに、できることを精いっぱいやれればと思っています。
まだジュニアの大会にも出ているので(注:早生まれのため、高1でもジュニア大会に参加資格があり、先日の東京ジュニア選手権大会では個人で優勝している)、1年生らしい元気な演技をして、ジャンプでの開脚もしっかり見せられるようにしたいです。」
インターハイを間近に控えたプレッシャーは、その笑顔からは感じられなかった。
まさに1年生らしく、インターハイという大舞台をわくわく楽しみにしている。そんな風に見えた。
亀井理恵子の魅力は、ジャンプだけではない。
なんといってもその音感のよさ。演技の隅々までが音にしっくりはまっていることにかけては、かなり抜けた存在のように思う。
彼女を演技を見て、生まれながらに「音楽が流れてくると体が動く」そんなタイプなのかな、と思っていた。
ところが、決してそうではないのだという。
「とくべつ音感とかリズム感がいいと思ったことはないです。ただ、今のルールになってからはとくに、どの選手も曲に合わせて踊るようになってきているし、上位の選手はそういうところがすごいです。
私も上位選手のそういうところは意識して、自分も少しでも近づけるように、とは思って演技しています。」
天性ではなく、「意識すること」「努力すること」で、今の彼女の演技の個性が成り立っているのだとすれば、それは、多くの選手たちにとっても励みになるに違いない。
この先、どんな選手になりたいか、と訊ねてみると、
「いろんな人が、私の演技を見て、いろいろなことを感じたり、あこがれたりするような選手になりたいです。」
少し照れくさそうに、でも、まっすぐに前を向いて、亀井理恵子はそう答えた。
「でも、まずは、ひざやつま先が硬いのをなんとかしないと。
それから、もっとピボットの回転数も増やしたいし、パンシェターンもマットの上でもふらつかずにしっかり回りきれるようになりたいです。」
彼女の口からは、次々と自らの課題が飛び出してきた。
インターハイ出場も、まだまだ彼女には通過点でしかないのだ。
もっと先に、もっとかなえたい夢や理想をもっている選手なのだろう。
今までとおりに、コツコツと、地道に努力を続けていけば、いつかは「こんなところまで?」というところまで登っているかもしれない。
そんな秘めた可能性を感じさせる選手である。
PHOTO:Ayako SHIMIZU TEXT:Keiko SHIINA