2014南関東総体に向けて~国士舘高校(東京都) 

「道のり」

 

 メンバーすら満足にそろわないチームが、苦難を乗り越えながらインターハイを目指す――なんていう古き良きドラマを地で行くようなチーム。それが、今回、地元開催のインハイを迎える国士舘高校だ。創部からここまでの道のりは、驚くことばかりだった。

 現在、国士舘高の部員は5名。インハイには6人制の団体にも5人で出場するため、必然的に得点はのぞめないものになる。だが、主将で3年の佐藤守弘が「(インハイでは)順位は気にするレベルじゃないので、自分のできることをしっかりやろうと思います」と話す理由は、それだけではない。

 

実は主将の佐藤だが、彼が新体操を始めたのは昨年の9月。インハイを迎えた時点でも、まだ1年も経っていないのだ。なぜそこまで経験が浅い彼が主将を務めているのかと言えば、答えは明快で、その彼がもっとも部歴の長い選手だからだ。

もともと器械体操をしていた佐藤は、高校入学後も1年半ほど器械体操を続けていたが、ケガが続いて成果を出せずにいた。そんな折に新体操部設立の話を聞き、「インハイでは新体操部に助っ人に行ってもらうかもしれない」という話を顧問の先生から聞いていた。が、2年になった9月、蓋を開けてみたら、団体には人数が足りないからと新体操部で個人をすることになった。翌年には1年生らが入部、なんとか団体が組める4人ギリギリのメンバーがそろった。当初は助っ人のつもりが、いつしか後輩もできて、押し上げられるような形で主将になった。

 

 今年5月の、インハイの予選にあたる関東大会にはこの4人で出場。では、現在5人で練習しているのはどういうことかというと、なんとその関東大会後、わずか3カ月ほど前に入部した選手が入っているのだ。

 本当にギリギリのところで形にしてきたチーム。いや、チームというにはあまりに期間が短すぎるかもしれない。が、演技を見る限りそこまで違和感や無理を感じないのは、選手ひとりひとりにクセがなく、シンプルな構成ながら実に素直にこなしているからだ。また、1年にはジュニアから新体操経験があり、全日本ジュニアにも出場してきた石川裕平が入っており、佐藤とともにチームを引っ張っていく存在となっている。1年の川端勇輝は、佐藤と同じ体操クラブ出身で、タンブリングには安定感がある。互いが互いを補い合いながら、演技をまとめあげている。

 

しかし、ここまで急ごしらえのチームで、自分が主将となってインハイを迎えることになるとは佐藤としても露にも思わなかっただろう。競技に慣れる間もなく、自分よりも経験が浅い選手が入ってきたので、早々に教える立場にもなった。今のメンバーに落ち着くまで、チームの不和や辞めていく選手も見てきた。短期間の間に、あまりに多くのことがあった。

 

恐らく複雑な思いもあったであろうこれまでを振り返って「どんな思いだったか」とたずねてみると、答えは間髪入れずに返ってきた。

 

「全部、面白いです。新体操が楽しいです」

 

理由はこうだ。

 

「中学から高校2年の途中まで、器械体操をやってきたんですが、ケガばかりで成長がなかったんです。でも、新体操では日々成長が感じられたので。それが楽しい」

 

今回のインハイ、佐藤は個人と団体の両方で出場する。初めて見た彼の個人は、リスクのキャッチもままならないような状態で、1本の演技が形にならないことも多々あった。それが、最後の大会を目前にした今、上挙の線の綺麗さや、国士舘らしい気持ちのいい体操を表現できるまでになった。

 

見ていてどこか清々しいと感じる演技――そう思うのは、そこに彼の心身の成長があったからかもしれない。

 

●東京都代表選手(個人):石川裕平

 

彼、石川裕平の場合、今回のインハイ出場は高校の全国大会デビューということと同時に、国士舘ジュニア1期生のインハイ出場という側面が大きい。

 

全日本ジュニアでは団体などで徐々に頭角を現し始めている同チームだけに、そこが輩出した選手が高校でどう活躍するのかは今後注目しておきたいところでもある。

 

またジュニア時代は、彼自身が「今まで万全の状態で大会に臨んだことが一度もない」と話すよう、ケガなどのため調整がうまくいかないことが多かった。

 

ノーミスで通れば雰囲気を感じさせる選手だけに、悔しい経験もしてきたはずだ。高校からの大会は、自らの調整能力が試される場でもある。悔しい思いの分、これからそれをどう克服していくのか注目したい。

ジュニア時代から国士舘大の選手と練習をしている国士舘ジュニア。今回のクラブの演技は斎藤剛大(国士舘大・4年)、スティックは弓田速未(同OB)に作ってもらった。それが恵まれた環境だということは、本人も自覚している。

 

「とにかくノーミスで演技がしたい。大学生につくってもらった演技なので、簡単にはミスできないなと思います。気持ちよく、ノーミスで恩返しがしたいです」(石川)

 

Text by Izumi YOKOTA

 

 

 

●東京都代表選手(個人):佐藤守弘

 

 彼を初めて見たのは、去年の10月ころではなかったかと思う。そのときすでに高校2年生だったが、国士舘高校男子新体操部の新入部員だと聞いた。当時の国士舘高校は、2人いた3年生が引退し、せっかく創設した部が、存続の危機にあった。

 

体操競技経験のある佐藤は、そんな状況の部にとっては救世主的存在だったろう。

 

しかし、せっかく入部はしたものの、部員がほかにはいないのだから、私が練習場で見たときの佐藤はたいてい国士舘のジュニア選手たちと一緒に練習していた。

 

ジュニアでもすでにキャリア3年という選手もいるので、手具操作などでは、遅れをとりつつも、とにかく常に真面目に練習している姿が印象に残る選手だった。

 

そして、なんと言っても、どこにいても目を引くのが彼のつま先の美しさだった。体操経験があるのだから、まったくの素人ではないにしても、体操競技の選手には、こんなにつま先のきれいな選手はそうそういない。

 

男子としては珍しい、甲のカーブがしっかり出せる 彼の足先は、男子新体操選手の中でもトップレベルの美しさだと思う。

佐藤が高校3年生になった今年の4月、新入部員も入った国士舘高校はやっと団体を組めるようになった。

 

新体操のキャリアは1年にも満たない佐藤は、団体と個人両方をやることになり、おそらくかなり大変な思いをしてきたのではないかと思う。しかし、練習を見るたびに、どんどん演技はまとまってきていた。

 

そして、5月に行われた東京都のインターハイ予選で2位となり、開催地枠でのインターハイ出場を決めたのだ。そのときの彼の演技は、7か月前に新体操を始めた選手の演技には、とても見えなかった。

 

難易度の 高い演技内容ではないかもしれない。が、彼のもつ線の美しさ、体操の美しさ、そして、体操で鍛えたタンブリングの確かさが、しっかり見える演技だった。

 

あれから、3か月。

 

「インターハイ出場選手」としての自覚をもっていっそう練習に励んできたに違いない彼の演技は、ますます磨きがかかってきている。

 

おそらく全国では誰も知らない無名選手だが、インターハイではぜひ注目してほしい選手だ。

 

「インターハイに出られるのは本当に運が良かったと思っています。東京開催じゃなかったら、きっと出られなかったと思う。悔いのないように、自分にできることをしっかりやりたいです」(佐藤)

Text by Keiko SHIINA