2014南関東総体に向けて~笠井菜々子(日本橋女学館高校)

今年のインターハイまで、あと2週間となった。

今年は東京開催ということで、会場はあの代々木第一体育館。

例年、インターハイは観客が多く、会場に入りきれるかどうかが懸案事項となるが、今年はさすがに「入れない」ということはなさそうだ。

 

長年、新体操を観戦しているが、観客数の多さは、やはりインターハイが一番だと実感している。

そこにきて、今回は代々木第一。おそらくジャパンでも見たことのない大観衆になるだろう。

 

そのインターハイに向けて、ひときわ力が入っているのが、開催地・東京の選手たちだ。

そこで、女子の東京代表選手の1人・笠井菜々子選手の練習場所を訪ね、インターハイへの思いを語ってもらった。

高校2年生の笠井は、今回2回目の挑戦でインターハイ出場を射止めた。

「去年は、インターハイ出場を狙っていたんですが、出られなくて、その分、今年はどうしても出たいと思っていたので、出られることになってとても嬉しいです。」

笠井は、笑顔でそう言った。

 

その「念願がかなってとても嬉しい」という気持ちは、この日の練習ぶりにも表れていた。

 

笠井は、ジュニア時代から所属している東京ジュニア新体操クラブで、高校生になった今も練習をしているが、大所帯のクラブなので、この日も決して広くはない体育館の中で、小学生を含む多くの選手たちが練習をしていた。

 

指導者は、代表の波多野恵子先生のほかコーチが2人。

それでも、これだけ多くの選手たち、それもまだ手のかかる小学生も大勢抱えているとなると、手いっぱいだ。

昨年は、国体の東京選抜チームのメンバーでもあり、今年はインターハイに出場。

笠井菜々子は、このクラブの中心選手であることには間違いない。

しかし、練習会場で見る彼女は、なんら特別扱いもされておらず、むしろ先に試合を控えているジュニア達の邪魔にならないように隅のほうで練習している、控えめな印象だった。

決して、練習の手を抜いているわけではない。

練習会場の端のほうで、ただ黙々と自分を見つめるような練習を繰り返していた。

それは、すでに高校生になり、人から言われなくても「自分のやるべきこと」を理解している練習ぶりなのだった。

つきっきりで見ている人がいなくても、周囲でジュニア選手たちがわらわらと練習していても、いい意味でマイペースに練習し、自分の演技を磨いていく。高校2年生になった笠井は、それができるようになっていた。

 

この日の練習で、彼女が最初に通しを行ったのは、ジュニアの団体(それも3チームもある)の練習がひとしきり通しを行ったあと、ほんの隙間のような時間だった。

それでも、定評のあるボールの演技は、この日最初の通しであるにもかかわらず、安定感があり、彼女の持ち味であるしなやかさ、女性らしさが十分に発揮された美しい通しだった。

「この曲は、PVがお父さんが死んでしまう内容で、歌詞も暗い感じなんですが、とても好きな曲で、自分で選びました。

大切な人への感謝の気持ちを伝える演技にしたいと思っています。」

と笠井は言うが、「感謝の気持ち」というには、かなりセクシーな感じがする。

そう笠井に伝えてみた。

 

すると、笠井は、「セクシーですかあ」と笑い、

「この曲は、クリスティーナ・アギレラの曲で、アギレラがとてもセクシーなので、ちょっとそのイメージが入っているかも(笑)。」

と言った。そんな彼女は、踊っているときよりは、ずっと幼く見えるし、セクシーというより意外にさばさばとした元気な女子高生! という印象だった。

 

もう1つの種目・フープは、インターハイに向けて、曲と構成を変えた。

クラッシック曲の「月光」にのせた、笠井の線の美しさと動きの柔らかさが引き立つこの作品も、インターハイまでにこなしきれれば、よい評価を得られそうだ。

今回のインターハイは地元開催のため、東京の選手にとっては、例年以上の大応援団が予想されるが、それをプレッシャーには感じないか? と聞いてみると、

「私は中学生のときも、東京開催の全中があって、去年も東京開催の国体に出ることができたので、じつは地元開催の全国大会は3回目なんです。」

と笠井は答えた。

たしかに。言われてみれば、そうだ。

しかし、それってある意味、すごい運をもっているということなのではないか。

「地元ならではの大応援は、プレッシャーというよりも力になることを、国体でも経験しているので、今回も自分の力にしたいと思います。」

そういう笠井は、経験に裏打ちされた力強さがあり、頼もしかった。

 

女性らしい、たおやかな演技の印象よりも、笠井菜々子は、ずっと明るく、男前な選手だった。

そんな彼女ならば、きっと代々木第一の大観衆も、大声援も自分の味方にしてしまうに違いない。

 

PHOTO:Naoto AKASAKA    TEXT:Keiko SHIINA