「体操界の美魔女たち」②~2016全日本マスターズ体操競技選手権大会
昨年に続き、今年も内村周子選手(スポーツクラブ内村)が、マスターズ大会に出場していた。
会場のアナウンスでも紹介されていたが、あの内村航平選手のお母さんだ。
昨年も今年も、一部では報道されているが、それはあくまでも「内村航平の母が大会に出ていた」という域を脱していなかったように思う。
しかし、今回、その演技を間近で見て、本気で驚き、本気で感動した。
息子が誰か、なんてことは関係なく、ルーデンスの選手たちと同じように、年齢を重ねても、いや重ねたからこそか、と思える
美しい体操を、内村選手は見せてくれたのだ。
今大会では、なんと4種目ともに出場した内村選手。
最初の跳馬、次の段違い平行棒は、おそらく本人も「ひやひや」のチャレンジだったように見えた。
演技後には、「無事終わってほっとした」というような笑顔も見えていた。
しかし、3種目目の平均台。
そして、最終種目のゆかは、「本気」だった。
もちろん、現役選手のような難度の高い技ができるわけではない。
それでも、今の自分にできる技を、できる限り美しく、そして表情豊かに伝えようとする演技であり、その線の美しさ、動きの優雅さは群を抜いていた。
とくに、ゆかでは、かなりバレエレッスンを積まれてきたのだろうと思われる、洗練された動きで、
往年の名画「追憶」のテーマを演じ切った。今の年齢になったからこそ、醸し出せる味わい。
「過ぎゆく時への慈しみや感謝」などを、フロア上に描き切って見せた。
体操や新体操などで鍛えられた身体や能力をもった選手たちが、「現役ではない」「年をとった」などの理由で、
人前で演技することから離れていくことは、なんともったいないことなのか。
内村選手の演技を見て改めてそう感じた。
内村選手とて、まだマスターズ大会への出場は2回目。
自らが演技することはなく、子どもたちの育成や息子さんの応援に回っていた時期が長かったと思われる。
しかし、それでも、再びこういう風に踊れるんだ! 遅すぎることなんてない! と身をもって教えてくれているようにも感じる。
内村選手の演技は、そういう意味で、多くの人に勇気を与えるのではないか。
内村航平選手は、リオ五輪での2つの金メダルで日本に元気を与えてくれた。
が、その母も、負けず劣らず、多くの後進たちに勇気を与えてくれた。
「内村航平の母」ではなく、「内村周子」という一選手、一体操人として、これからも活躍してほしいと願わずにいられない。
PHOTO:Yuu MATSUDA TEXT:Keiko SHIINA