2014体操ワールドカップ東京大会 FERRARI Vanessa(ITA)会見

女子優勝者・FERRARI VanessaITA)の会見は、日本人記者からの日本語での質問を、通訳が英語にし、英語のできるイタリアチームのコーチがイタリア語でFERRARIに質問を伝え、FERRARIはイタリア語で答え、それをコーチが英語に直して日本人の通訳に伝え、通訳が日本語で記者に回答を伝えるという、なんともまどろっこしいものになった。

それでも、試合後で疲れていたに違いないのに、FERRARIは嫌な顔をひとつすることなく、ていねいに質問に答え、優勝できたこと、自分の思うような演技ができたこと、がとても嬉しいらしく終始ご機嫌だった。

 

「会場に向かうバスの中ではとても緊張していました。段違い平行棒がとても不安でしたが、スペインの子からも“大丈夫だよ”と言われ、落ち着いてよい演技をすることができました。」

 

記者から、今回の演技は、ロンドン五輪のときとは変わっているか? と質問されると、

「跳馬は、ユルチェンコ2回を以前は跳んでいましたが、今回はユルチェンコ1回にしました。

段違い平行棒は、変えていません。平均台はルール変更に合わせて少し変えました。ゆかは、2本目のシリーズに伸身宙返りを加えてアップグレードしました。」と、答えた。

 

1990年生まれのFERRARIは、若い選手達の台頭著しい女子体操の世界では、ベテランの域になる。記者から、「ベテランと呼ばれる年齢でも競技を続けていくうえで、気をつけていることは?」という質問が出た。

「昔、アキレス腱の断絶をやって手術をしました。今でもそこには不安がありますが、ゆかの器具が変わって負担が減ったので、かなりよくなりました。年齢があがってきてからは、2部練習をせずに、1日1回だけの練習にしたり、無理しないようにしています。でも、リオ五輪でもメダルをとるつもりでやっています。」

 

最後に、日本の女子選手の印象を訊かれ、「日本の選手は、段違い平行棒と平均台は強くていいと思います。ただ、跳馬とゆかが少し弱いのですが、それは日本の選手が小さくて、細いからではないかと思います。」と、笑いを交えながら答えた。

通訳を通しているので、細かいニュアンスまでは伝わっていないと思うが、日本の選手は「小さくて細い」と言うときに、「私と違って」というような表情を見せていたように思う。たしかにFERRARIは、身長は小さいが体躯はがっちりしていて、とくに上体の厚みは男子顔負けだ。しかし、今回のようにビシッと決まったときの演技を見れば、このたくましい身体、あってこそと納得できる。

2016年のリオ五輪のとき、FERRARIは、26歳になっている。女子の体操選手としてはかなり年齢は上のほうになるが、そこでも「メダルをねらう」と、高いモチベーションを保っている彼女なら、ベテランならでは円熟した演技を、リオでも見せてくれるに違いない。

 

PHOTO by Katja / Yuki SUENAGA  TEXT by Keiko SHIINA