2014体操ワールドカップ東京大会 男子前半種目レポート

4月5日に開催されたTOKYO CUP 2014 FIG体操競技・個人総合ワールドカップ東京大会。

まずは男子前半種目をレポートする。

 

◆ゆか

まず1人目から注目のSergio Sasaki Junior(BRA)選手。この選手は見た目からも分かるように脚力が強い選手。日本人には見られない力強い演技が魅力的で、その期待通りの演技を見せてくれた。1人目で会場の雰囲気もまだ固い中、それを打ち破るかのような迫力。公開練習で何度も確認をしていた1本目のシリーズも見事に着地を止めた。着地が低くなるところも見られたが、昨シーズンより着地を止めにいき、パワフルかつ丁寧な演技を見せた。

2人目は内村選手。さすがに会場も一気に沸く。しかし、珍しく1ヶ所着地で大きく跳ねる。とはいえ、彼にしては大きめに跳ねてしまっただけで、他の選手にとってはよく起こりうる程度だ。その後は難なくまとめEスコアも9点を叩き出す。

ファンには定評のあるDaniel Purvis(GBR)選手のゆか。なんとも独特な雰囲気をもつゆかの演技をする選手なので、楽しみにしていたが、途中手をついてしまう大きなミス。それ以外はきれいにまとめていたのだが、そのミスが響いて14.566と、得意のゆかでの点数は伸びなかった。

同じくイギリス代表のSam Oldham選手はPurvis選手とはまた違ったタイプの選手だ。体格も特に身長が高く、上半身はがっちりしているが、下半身は上半身に比べすらっとしている。そんな脚で跳んでいるとは思えないほどの高さを見せるのが彼のゆかの魅力。脚力が強いと言っても、Sasaki選手ともまた違っている。スピード感とダイナミックさを併せ持つ選手だ。あまりの高さに会場がどよめいていた。公開練習から気になっていた選手だが、本番でもインパクトのある演技を見せた。

加藤選手も内村選手に続き、ノーミスの演技をする。ひねりが多い構成、ひねり方、倒立など、なんとも今の日本男子らしい演技で、見ていても、もはや安心感さえ感じてしまった。

 

◆あん馬

内村選手は入りで少しポメルに触れるところもあったが、きれいにまとめた。

あん馬が大の苦手のFabian Hambuechen(GER)選手。張りつめた空気になるも、この日好調だった彼は落下もなく、彼としてもかなり良い方の実施。

脚が長くすらっとしたFabian Gonzalez(ESP)選手。あん馬では身体のラインを上手く使ってきれいな演技をするのでは、と期待していた。期待通り脚の映える実施を見せるも、最後の最後で力つきてしまったのか下り技で落下。技の認定がされないと思ったのか、最後までやり切りたいと思ったのか、おそらくそのどちらもだとは思うが、もう1度下り技をやりなおす。2回目はきれいに決まり、本人もほっとした表情を見せた。

落下する選手も出る中、加藤選手はここでも強かった。難度を下げた構成のあん馬では、内村選手に追うようにしてノーミスの演技。珍しく着地で動いてしまったものの、きれいにまとめる。個人的には少し腰が折れている部分があるような気もしたが、全体の流れは良かった。

ゆかで高さとスピードのある演技を見せたSam Oldham選手。イギリスはあん馬が得意な国なので注目していた。演技が始まって、ゆか以上にスピードのある旋回に驚いた。高難度の技をいくつも入れているのに、スピードは変わらず足先の揃ったスムーズな旋回をする姿には魅了された。が、その矢先、後半疲れてしまったのか脚割れが多く目立った。

 

◆つり輪

Daniel Purvis選手は足先が特に美しい選手なのだが、つり輪でもそのつま先は一際輝いていた。もちろん倒立姿勢の足先は隙のない美しさだが、彼のすごさはスイング系の技でさえ、そのつま先が崩れないところにある。崩れないどころか、むしろ倒立よりも輝きを増しているように見えた。その足先が動くことで光を反射させているかのようで、きちんと研がれたナイフでまさに空を切るような演技だった。

同じくSam Oldham選手もスイング系が特にきれいだった。

力強さから、つり輪でも期待が大きいSasaki Junior選手。やはりつり輪の見せどころ、静止技での安定感は素晴らしいものだった。中水平などの位置もきれいで、安定した期待以上の演技を見せてくれた。

公開練習でとてもつり輪を気にしていた加藤選手だが、この日は新しく入れたアザリアンからきれいにまとめた演技を見せる。

内村選手もさすがの演技。足先まできれいな演技、安定感のある演技を見せた。

 

ここまで、ゆか、あん馬で多少のミスが見られるも、全体としても悪くない雰囲気で後半種目を迎える。

今大会は男女同時で女子の演技を待ちながらの進行となるため、後半になるにつれ疲れや身体の冷えが出てくる可能性が高い。

そんな中、どういった試合運びをしてくるのか、各選手に注目しながら後半種目をまとめていきたい。

また、前半種目でうまくいかなかった選手や、得意種目が後半に偏っている選手には、そのリカバリーやモチベーションにも注目したい。

 

TEXT by Umi PHOTO by Katja