第67回全日本体操団体選手権:男子決勝②

そして、この日も全種目に出場した加藤凌平選手。
1種目目のゆかは危なげなくさらっと演技し、内村選手に次ぐ種目別2位の高得点をさらっとたたき出してしまう。
決してさらっとやっているわけではないと思うが、もう彼にはそれだけのものが備わっているように感じた。
つり輪も自身のカトウを決め、ノーミス。調子が良いことが窺えた。
 
 
しかし、次の跳馬では加藤選手らしからぬミス。
練習の段階でもかなり調子が良さそうで、これはロペスを跳ぶかも、と感じていた。
そして、予想通りロペスに挑んでくる。しかし、着地で大きく崩れてしまう。
こんなに大きなミスをする彼は久しぶりだった。
本人も、「調子が良すぎて跳馬に突っ込みすぎた。これを言い訳にはできないが、
会場が暑くて必要以上に身体が動いてしまった。コナミの鉄棒で大きく離されることはわかっていたので、
それに対して上回りたいと思ったのでロペスを選んだ。少し後悔している。」と跳馬の演技を振り返った。
 
平行棒では野々村選手のミスがあったが、その直後でも動揺やプレッシャーなどは一切感じさせない
まとめる演技をしていたのを見て、加藤選手の強さを改めて感じた。
鉄棒でも高いコールマンを見せ、着地もまとめる。「跳馬のミスはあったが、それ以降はミスなくできた。
結果は残念だったが、来年に向けていきたい。」と演技全体を振り返り、「演技が成功していてもコナミには
負けていたと思うが、日体大に負けたのがとにかく悔しい。もちろん、コナミも倒せる、より強い順大になっていきたい。」
と団体戦について語った。
 
 
今シーズンを振り返って、「とにかくきつかった。苦しい試合ばかりだった。でも、それが世界選手権で報われてよかった。
来シーズンに向けて課題がたくさん見つかった1年だった。」と言い、「世界選手権はDスコアを下げてやっていたので、
そのときよりDスコアを1点近く上げたい。演技の質も上げ、安定させたい。いいリズムで演技ができるように練習したい。」
と目標を掲げていた。
 
 

そして、高校生ながらも決勝に残り、予選よりも順位を上げた脅威のチーム、市立船橋高校。

この日、加藤選手ともうひとり、6種目全てに出場した谷川航選手。

1種目目の跳馬は着地を1歩にまとめ、14.700で種目別では高校生にして9位という高得点をマーク。

続く平行棒でもさらっと爽やかな演技を見せ14.700でチームトップのEスコアをマーク。

彼のすごいところは綺麗な演技をきちんとしてくるところだ。

鉄棒でも出場選手中Dスコアは1番低いが、Eスコアは8.500と高い得点を出してくる。

 

 

ゆかでは高校生ながら種目別6位につける15.050を出す。

ここでも美しい、減点のない演技を見せる。

あん馬では唯一落下があったが、それ以外ではミスもなく綺麗な演技を続け、高校生とは思えない安定感を見せる。

 

倉島大地選手は平行棒からの演技。

気迫があり、技ひとつひとつを強く大きくしっかり決めようとしているような演技だった。

鉄棒でも高いコスミックを見せる。ゆかでは先ほどの平行棒を思わせるような、ひとつずつ丁寧な実施。

彼の演技はそういった丁寧さが印象に残る。

 

そして、市船といえば早坂尚人選手。

この日最初の跳馬では着地を決め、いきなりガッツポーズ!

平行棒、鉄棒でもいい演技をし、さすがだなあと思っていた。

 

 

しかし、その後のゆかでは着地で大きく乱れてしまう。

高さもいつもよりない気がした。予選では素晴らしい実施で種目別1位通過もした得意種目だったのだが、

この日は上手く合わなかったのか珍しいミス。

演技終了後すぐに「うわー」という表情で頭を両手で抱える仕草を見せた。

 

 

そして市船でとても記憶に残っているのは前野風哉選手。

あん馬で見せたとても速い旋回で、なおかつ綺麗な演技に、会場でとても驚いた。

彼のあん馬は、頭から離れなくなる演技だった。

ローテーションも後半にさしかかったところで、高校生にこんなに引きつけられるとは思ってもみなかった。

 

 

日体大や順大の印象が強いが、仙台大学もいい演技をしていた。

特に村上雄人選手は演技全体を通して繊細さが見られた。

最初の種目である平行棒でも繊細で美しい演技を見せる。

ゆかでは繊細さに加え、高さのある演技をする。ほとんど着地も止めて、ここでも綺麗な演技をしてくる。

つり輪は少し揺れてしまうもノーミス。姿勢も美しく、着地もしっかりと止める演技。

繊細さと力強さを兼ね備えている選手だと感じた。

小原孝之選手のゆかも印象的だった。

とても力強く、蹴るとき、着地するとき、しっかり踏んでゆかを捉えてることがすごく伝わってくる演技だった。

 

今大会、特に学生のチームには団体戦らしい演技、空気感があり、とてもわくわくさせてくれる大会となった。

そして、感動が多くある大会だった。

 

PHOTO by Tatsuya OTSUKA    TEXT by umi