2013東京国体 少年女子決勝

女子はついついゆかばかり見てしまう。音楽もかかるので注目しやすいうえに、個人的に好きな種目もゆかであるからだろうか。

佐賀県代表池尻美緒選手(鳥栖高)のゆかは、タンブリングにとても高さがあり、大きな演技だった。
そのうえに、ダンスの表現力もすばらしく、しっとりと演技する。そして、観客をうっとりさせる。
彼女には空気を変えたり視線を集める力があるなあと感じた。しかし、段違い平行棒では惜しくも着地が乱れてしまった。
 
神奈川県代表の本間未来選手(岸根高)は平均台で多少のふらつきがあるも、まとめる演技を見せる。
そして最終種目のゆかでは最後2本のタンブリングで着地を完全に止める!
本人も納得のいく演技で締めくくれたのか、演技終了後に嬉しそうに監督やチームメイトのみんなと抱き合う。
選手のこういった表情を見ていると、こちらまで嬉しくなり、幸せな気持ちになる。
 
 
静岡県代表、芦川七瀬選手(常磐学園高)の段違い平行棒はとても大きな演技。
トカチェフも完璧な位置でバーを掴み、着地も1歩にまとめる完璧な演技だった。
段違い平行棒に引き続き、ゆかでも高さのある演技を見せていた。
 
気になったのは大阪府代表の中村有美香選手(四天王寺高)のゆか。
アラビアンな振り付けと音楽で、体操競技では珍しく会場を独特の空気で包む。
タンブリングは少し跳ねるも、雰囲気に引き込まれた。
 
 
そして男子の千葉県並みに圧巻だったのは東京都。
全日本選手権でも上位争いをする内山由綺選手(スマイル体操クラブ)に注目が集まる。
1種目目である跳馬のときから、ものすごい声援。それに応えるように2本ともしっかりまとめる。
しかし、本調子ではなかったらしく、段違い平行棒では棄権。平均台でも落下が相次いだ。
それでも最終種目であるゆかでは会場を沸かせる。曲がかかった途端におどろくほど表情が変わった。
今までの取材では客席から見ていたのだが、今大会はポディウムから見ていたので、表情の細部まで見ることができたが、
彼女の表情には度肝を抜かれた。体操は確かに採点競技ではあるが、シンクロナイズドスイミングやフィギュアスケートほどは「表現」というものを重視していない。
それにも関わらず、内山選手のゆか演技はまるでフィギュアスケートなどの採点競技を見ているようだった。
あの表情と身体を使った表現力とで、改めて彼女の虜になってしまった。「すごい」という言葉しか浮かばないが、「すごい」と言うとなんだか軽く聞こえてしまう。
それでも、他に言葉を探せなくなってしまうほど、とにかくすごかった。
 
 
そして、同じ東京都代表の田口恵名選手(明星高)も素敵なゆかを見せてくれた。
とても高いタンブリングに圧倒された。そして振り付けに手を叩く仕草が入るのだが、その場面で弾ける笑顔を見せてくれる。
その何とも素敵な笑顔にやられてしまったのである。東京都代表チームは内山選手のお母さんが監督だということもあってか、
選手同士だけでなく、監督も一緒に仲良さそうに応援していており、とても雰囲気のいいチームだった。
この田口選手の手を叩く部分でも、チームみんなで一緒に手を叩いており、そんな空気にも感動した。
世界選手権日本代表である村上選手とはクラブチームも高校も同じなので、よく同じチームに入っていた田口選手。
名前は知っていたが、どうしても村上選手にばかり目がいっていたことを、この日とても後悔した。そして、彼女の演技が大好きになった。
 
 
東京チームだけでなく、愛知県代表の山口比奈子選手(聖霊高)の演技にも感動した。
最近定番?であるピンクパンサーの曲だが、驚くくらい音楽にのって演技をしていた。
身体の動きから伝わってくるものに勢いや迫力があり、心打たれた。今までわたしが見てきたピンクパンサーの中では、圧倒的な表現力だった。
 
 
そして、以前から個人的に注目している同じ愛知県代表の松村泰葉選手(東海学園高)。
彼女のゆかは曲に合わせて、全身を使って表現しており、それが素晴らしく曲と合った演技なのだ。
わたしはあんなに曲に合った演技は見たことがなかった。初めて見たのは今年の全日本選手権。
正直、注目されている選手ではなかったと思う。そのうえ男女同時進行で、彼女が演技しているときには別の有名選手が演技しており、
わたしも有名選手の方に注目していた。しかし、曲がかかっただけで何かを感じ、自然と引き込まれたのかいつの間にか夢中になって彼女の演技を見ていた。
特にわたしのお気に入りは、ドラムのリズムに合わせて審判席に向かってゆかを叩くような動きをするところ。
そういった大きな動きから、小さな動きまできちんと作り込んでいて、それをしっかり形にできているのが何よりも素晴らしいのだ。
今回もさすがの表現力だった。先述したように、体操は表現力を競うものではないかもしれないが、それでもわたしは彼女の表現力は評価したい。
前回、全日本ジュニアではタンブリングで大きなミスをしてしまって本人もとても悔しそうにしていたが、今回ミスのない完璧な演技だった。
演技終了後には応援席から「泰葉ちゃん最高ー!!!」の声が。
わたしも「最高ー!」と声を出してしまいそうになった。今回は笑顔が見られて良かった。
 
普段から女子はゆかばかり見てしまうのだが、この日は特にゆかばかり見てしまっていた。
1つの種目を中心に見ていても、やはり男子側との空気の違いはとても感じた。
女の子の性質なのかもしれないが、どのチームもかなり結束力が強く、全体でとてもにこやかにしているチームが多く見られた。
選手同士のコミュニケーションも男子に比べると多いなあと感じた。
 
また、今大会は、何より運営陣の結束力がすごかった。
というのも、全ての競技を終え、最後の表彰式も終えた後、運営陣や関係者をみんな女子フロアに集め、みんなでお疲れさま会?をしていたのだ。
なんと次々に役員の方たちを胴上げしていたのだ!役員までもが、こんなに仲良くわいわいしているのを初めて見て驚いて、そしてとても温かい気持ちになった。
選手や監督だけでなく、審判員、受付の方、案内の方、他にも運営に関わってるたくさんの方たちのおかげで大会は成り立っているということを、改めて実感した。
当たり前のことかもしれないが、これを当たり前だと思ってしまってはいけないと思う。
大会終了後に、こうして集まってお互いを讃え合えるのは、選手だろうが役員だろうがとても素晴らしいことだということを、再確認させてくれるいい大会だった。
最後の最後に素敵な光景を目の当たりにできてよかった。
 
 
PHOTO by Katja   TEXT by umi